【01】消費期限の愛

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 そんなゴウガミは、アザミの元彼でもあった。  ヒドウは、他の班とはいえ上官にあたり、互いに顏も知っているため挨拶をしていこうか迷った。  しかしゴウガミはアザミが現在、遊びではなく本気でヒドウと付き合っていることを知っている。  もう一度チラリと窓から中を覗くと、ゴウガミが吸い切った煙草を消して新たな一本を取り出しているところであった。  向こうは書類に集中しているようなので、やはりこのまま通り過ぎようと歩きかけたのだが……。  ふと、あることに気付いたヒドウは、時間が止まったような感覚に陥った。  ……待て。  どうしてゴウガミ班長が、あれを持っているんだ?  あの特徴ある形、使い込まれた鈍い輝き……あれはアザミ班長が愛用している蓋付きのライターじゃないか。  ……いや、型は完全に同じだが輝き方が少し違う。  そうなるとゴウガミ班長の私物ということになるが、あまりにも一致しすぎている。
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