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「あのぅ……ちょっといいかな?」
やんわりと声をかけられた雅斗がハッとして振り返ると、一般企業の営業マンらしき清潔感のあるスーツ姿の男性がすぐ近くに立っていた。
「うわあぁっ!な、な、なんだテメェは!」
まさか目付きの悪い自分に声をかけてくる一般人がいるとは思っていなかったので、ふいをつかれて思わず大声になってしまった。
「驚かせたのならごめんね。あのさ、もしもここから川に飛び込むつもりだったら、やめて欲しいんだけど……」
なんだ、お節介な偽善者かよと雅斗はにらみつけて、
「はぁ?うるっせーな!俺が死のうがどうしようがテメェにゃ関係ねぇだろーが!」
と、全力で凄んだのだが、スーツの男は怯えて逃げるどころかマイペースに会話を続けてくる。
「すごく関係あるよ」
「適当なこと言ってんじゃねぇ!殴られたくなけりゃ失せろ!」
「いや、関係あるんだってば。僕ここでデートの待ち合わせをしているんだ。君が飛び込んだら通報しなきゃならないだろ?その後、警察の到着を待って目撃証言もしなきゃいけない。そうなってくると僕が君の件で拘束される時間は10分程度じゃ済まないだろうし……」
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