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てっきり「命を大切にしないとダメだ!」と言って、川へ飛び込むのを強引にやめさせようとする気だなと身構えていた雅斗は、この場で俺が死んでも同情されるどころか迷惑がられるだけってわけか……と、次第に空しくなってきた。
「あー!うるっせーな!分かったよ!だったら別の場所から死んでやるよ!」
と、ヤケ気味に怒鳴ってからスーツの男に背を向けてその場を離れかける。
「あ、君、ちょっと待って!」
「移動するって言ってんのに、まだ文句あんのかよ!本当に殴り飛ばすぞ!」
「君って、言葉は乱暴だけど根はいい人なんだね」
自分に向けられた優しい言葉によって桜場を思い浮かべてしまった雅斗は、目頭が熱くなるのを感じながらも強がって再びにらみつけた。
「おい、おっさん、意味分かんねぇこと言ってんじゃねぇぞ!」
「だって、見ず知らずの僕の事情を優先して、死に場所をわざわざ移動しようとしてくれたじゃないか」
「……っ!それは……」
「分かったぞ。さては君にも好きな相手がいるんだね?だからデート前の僕に協力しようと思ってくれたんだろ?」
「は、はぁ?そんな相手…………もう、いねぇよ……」
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