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「もういない?あ、ごめん……飛び込もうと思い詰めるほど失恋がショックだったなんて、君って見た目と違ってピュアなんだね」
「う、う、うるっせーな!俺のことピュアとか失恋したとか勝手に想像すんな!そんなんじゃねーよ!桜場さんはすげぇ高そうな黒い車に乗っけられた後、きれいさっぱり消えちまったんだ!」
「きれいさっぱり人が消えた?高級車ごと爆発させるマジックショーかな?あ、最近の若い人はイリュージョンっていうんだっけ?」
「爆発させんな!縁起でもねーな!ありゃきっと誘拐されたんだよ!それなのに俺以外どいつもこいつも桜場さんの存在そのものを知らねぇって言いやがる!もう訳わかんねぇし……俺、おかしくなっちまったのかなって……」
固く握りしめた拳を震わせながら悔し気に言った雅斗の言葉は、弱々しくなって消えていった。
するとスーツの男が、穏やかな声で尋ねた。
「ふーん……それでも君は、今でもその人に会いたいって思っているんだよね。どういう人なの?桜場さんって」
誰からも否定され続けた桜場の存在について向き合ってくれる人物にようやく出会えた雅斗は、極度の緊張から解放されてボロボロと涙をこぼし始めた。
「う……っ、うあっ……ああっ……」
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