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その時、表通りから男性の大きな声が路地の壁に反響して雅斗たちにまで聞こえてきた。
「警察ですか?今、数人がかりで通行人を襲っている暴力集団が……あ、はい、場所は……」
「おい!通報してる奴がいるぞ!」
「チッ!逃げろ!」
三人組は路地に面している飲食店の裏手のフェンスを越えて、逃げてしまった。
「あぁ、くそっ!財布がねぇ!初給料が……あいつらっ」
くやしがってアスファルトを拳で殴る雅斗のほうへ、足音が近づいて来る。
もう警察が来たのだろうかと身を固くしながら見上げると、
「大丈夫か?」
と、声をかけてくれたのは勤務先である「はろう建設」の土木工事部の先輩、桜場であった。
先ほどの不良たちとは比べ物にならないがっちりとした体格の強面な男性で、年齢は30代だと思われる。
しかし普段の彼は無口で職場での存在感も薄いため、雅斗も桜場に関しては「厳しい肉体労働を続けているうちに筋肉は鍛えられたものの、喧嘩や人付き合いは苦手そうなおっさん」という程度の認識しかなかった。
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