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「いえ、僕のほうこそお待たせしてしまって」
「ははっ、まだ待ち合わせ時間よりも早いよ。君とのデートが楽しみで、僕が早く来すぎちゃってただけだから」
と、腕時計の文字盤を見せると、長針がまもなく待ち合わせ時間を指すところであった。
二人は橋から移動し、街灯の照らす静かな歩行者専用道路を歩き始めたのだが……。
優羽との久々のデートが嬉しくてたまらないはずのカギヤが、うつむき加減で黙り込んでしまっているのだ。
そんな恋人の様子に気付いた優羽が、クスリと笑った。
「カギヤさん、僕に遠慮しないでください」
「え?」
「先ほどの青年のお話が、気になっているんじゃないですか?」
「うん……あ!で、でも、せっかく君とのプライベートな時間が出来たんだから、そっちを優先……」
「僕も今夜のデートは久しぶりだし、すごく楽しみにしていました。でも貴方が一度気になったら放っておけない性格だってことは分かっていますから」
「優羽君……」
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