【03】消えた殺人鬼

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 かつて鮫尾(さめお)は国防のための機関に所属していたが、暴力によるトラブルを起こして二年目に辞めていた。  しかし短期間ながら一般人よりも身体能力が鍛えられてしまったため、その力を本来持っていた残虐な性癖を満たすために悪用し始めてしまったのだ。  鮫尾は他者が苦しむ姿に性的な興奮を覚える男で、子供の頃から動物を虐待する傾向が見られていたという。 「(おおや)けには発表されちゃいねぇが、三件の現場にゃアイツの体液がぶちまけてあったんだってな」  と、苦々し気に言ってアザミが続ける。 「そんな危険な興奮を一度でも覚えちまった野郎が、警察から逃れるためとはいえ新たな事件も起こさず、おとなしく隠れ続けていられるもんかな?」  ちなみに鮫尾は犯行後、図々しくも各被害者宅のシャワーやトイレ、台所などを利用し、多数の指紋を残して去っている。  のどぐろの刺身を食べていたカギヤが、首を軽く横に振った。 「生理的な欲求が犯行動機である以上、無理だと思います。だからこそ、ここ一ヶ月ほど新たな犯行がないっていうのが本当に不思議なんですよねぇ。考えたくはありませんが、四件目の被害が露見していないだけという可能性も……」 「充分あり得るな。おっ、そういや鮫尾が最後に目撃された場所が変更になったぞ。白夜区(びゃくやく)の中でも一等地にある『アンダービースト』っつぅ会員制高級クラブの近くなんだってさ」
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