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「え?白夜区ですか?あそこに見える……」
そう言いながらカギヤは、窓の外に広がる都会の夜景の中でも一際まぶしく光が集中している区域に目をとめた。
「あぁ、夜を忘れた物騒な歓楽街さ。警察が発表している鮫尾の姿が最後に確認された映像の時刻より、さらに後の目撃情報だってオヤジから連絡が入ったんだ。ウチの監視班が、白夜区にある違法マッサージ店の防犯カメラの映像から探り当てたらしいが……」
オヤジというのは「96」の創立メンバーの一人であり、アザミの上官にもあたる切れ者だが地味な片岡警視長のことである。
するとカギヤが、はっとした表情になってアザミを見た。
「ん?どうしたぁ、カギヤ?」
「現在、白夜区を仕切っているヤクザは、波老組でしたよね?」
「あぁ、昔から大金が動く街ってことで抗争も多かったが暴対法が施行されて以降、商売が上手い波老組に落ち着いた感じだよな。まぁ、共倒れを防ぐために同業同士で密かに手打ちがあったかも知れねぇが」
「実は僕、今夜は優羽君とデートの予定だったんですけど……」
突然ポンッとカギヤの肩にアザミの大きな手が置かれた。
「そうか、振られちまったのか……。まぁ確かに優羽は、オメェにゃちょいともったいねぇ才色兼備の好青年だったからなぁ……」
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