【03】消えた殺人鬼

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「……桜場って土木作業員が黒い高級車で連れ去られたのに、彼が働いていた建設会社はそんな人物は知らないと言い張っている。つまり『桜場の存在が消されちまった』というわけだな?」 「はい。桜場さんは相当鍛えられた体格の男性だったのに、抵抗する様子もなく高級車に乗せられたそうです。それで同じく体格の良い鮫尾(さめお)が姿を消してしまった件と何か関係あるような気がして、班長に至急ご報告したかったんです」 「なるほど……さらに桜場が勤務していた『はろう建設』が波老(なみろう)組のフロント企業で、鮫尾が最後に目撃された白夜区は波老組の縄張(シマ)だったなんて、偶然の一致にしちゃ出来すぎだよなぁ?」 「はい。鮫尾の最新の目撃情報については、ここに到着した後で班長から聞いたので驚きましたが……」  と、カギヤが困ったような笑顔を見せる。  それからしばらくの間アザミは無言であったが、考えがまとまったらしくグラスの残りを飲み干した。 「今回の標的(ターゲット)である鮫尾は、人間の存在を消すのが上手(うま)い連中と関わっている可能性が高い。もしかしたら俺も消されちまうかも知れねぇ。ヒドウは休暇中でな。オメェとマリネに援護を頼みたい」 「了解。班長が消されても絶対に見つけ出しますのでご安心を。ですが、くれぐれも気を付けてくださいね。ヒドウ君のためにも」  カギヤに心配されたアザミは「あぁ……ありがとよ」と微笑むと、妖艶な瞳で夜のない街に照準を定めたのであった。
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