【04】沈みゆく氷

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 その後も飲み続けたヒドウは気持ちが楽になるどころか、自分の命に価値を見出せずに生きていた「96」にスカウトされる前、つまりアザミと出会う前まで時間が逆戻りしたような嫌な感覚に囚われだした。  何度目かの嘔吐の際に喉が切れたのか血が混ざり始めたことに気付き、足元をふらつかせながら店を出ると深夜3時になっていた。 「いいかぁ!また痛い目にあいたくなけりゃ、二度とオレにそんなナメた態度すんじゃねぇぞぉ!」  威圧的な言葉を吐き捨て高級クラブの裏口のドアを蹴り飛ばして閉めたのは、短い髪を金色に染めたスーツ姿の青年であった。  その性格は実に短絡的で我慢という言葉を嫌い、少しでも気に障った相手がいれば手加減なく暴力をふるうのだが、当然ながら罪悪感を感じたことなど一度もない。 「おい急げ、おまえのせいで見回りの時間が押しちまったじゃねぇか。オーナーを待たせたらまずいぞ」  一緒に店から出てきた紺ネクタイの男が、強奪したばかりのブランドのライターを早速使って煙草に火を点けている金髪をせかしたのだが、 「あの店のマネージャー、大学出てるからってオレのこと下に見やがって、一回てめぇの立場をきっちり分からせてやったんスよぉ。そういうキレツ?キリツ?とかって裏社会には大事だと思うんスよねぇ」  と、まったく反省する様子もなく鼻から煙を出しながらニヤニヤと笑っている。
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