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「いいなー、真野さんは佐伯課長といつも一緒で」
「そう?」
「そうですよ!」
何言ってるんですか、そうに決まってるじゃないですか!と後に続きそうな力強い勢いで美桜ちゃんが返してくる。
「私なんて、あんな小さいおじさんといつも一緒なのに……」
「富士山課長、優しくていいじゃない」
「えぇー、優しくても、おじさんだし……」
ぷーっと膨れた顔で、向かいに座っている私に、不服そうにそう言ってくる美桜ちゃんに、「佐伯課長と富士山課長同期でしょ?」と、隣から声が飛んでくる。
「えっ⁈うそ?信じられない!……いやいや、冗談でしょう?」と、興奮する美桜ちゃんに、「富士山課長、大学出た後にヨーロッパの大学に留学してたらしいから、年はちょっと上らしいけど」と、もぐもぐとサンドイッチを食べながら冷静に説明するのは、情報通の百間さんだ。
地獄耳の百聞と異名を持つ彼女は、社内で話せば必ず百間の耳に届くと言われる程、なんでも知っている。
「佐伯課長ってさ、確かにカッコいいけど、ねぇ……」と意味ありげに語尾を上げる百間さん。
「そんなの噂じゃないですか?本当かどうかわからないことに、私は振り回されません!」と、もう一度頬を膨らます美桜ちゃんは、やっぱりかわいい。
本人は、本気で立腹していることを伝えてるんだろうから、かわいいなんて言ったら失礼なんだろうけど…
「でもさ、残念ながら本当っぽいよ。佐伯課長は、やっぱり男の人が……」
「もう、デタラメ止めて下さいよ!」
美桜ちゃんが口調を荒げても、動じることなく百間さんは続ける。
「それがさ、デタラメじゃないみたいなんだよね。また、佐伯課長がイケメンマッチョと、ホテルから出て来たところを見た人がいるのよ。この前のマンションから出て来た人と同じ人みたいよ」
「単なるお友達でしょ?」
「いやぁー、お友達とホテルにはいかないでしょう?それに、マンションへの出入りも頻繁みたいだし、アラフォー男がそんなにお友達の家に遊びに行く?絶対怪しいって」
自信満々にそう言う百間さんに、納得いかないながらも美桜ちゃんは、何も言い返せずにいた。
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