異世界帰省の夏休み

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 小さな仕出し弁当の会社の重苦しい中の会議。先代の社長であった今は亡き私の母からこの会社を引き継ぎ数年、なんとか持ちこたえていたが、急速な業績の悪化。会社をどうするか。会議室に重苦しい空気が流れる。  社員の彼らとも、長い付き合いである。だがここで思い切って縮小としても、どうなるものか。私はもちろん。彼らだってわかっている。また役の付いていない社員、パートもだ。生活というのがある。時間が無駄に流れる。 「・・・事業の縮小やむなしです」 人事部長がつぶやいた。 「それは、人員を・・・整理というりもですか。それは最後でしょう」 「しかし、この業績の結果を見てください。速やかにですこのまま手を打たず全部なくなるか、一部を切り離して生き残るか」経理部長が言った。 「君たちの言いたいのはよくわかる。ただ人員を簡単に切るのだけはよしてくれ。先代からの言い伝えだ」  先先代の社長は若くしてこの世を去った私の父である。そのご家族経営で母が社長となり、母も高齢となったため。そ私が東京からやって五代目社長となったのだ。先代の教えは正確には母から聞いている。  創業時会社は最初個人商店だったそうだ。今とは違う地方で開業したらしい。その場所は私は知らない。  規模は確かに小さい会社ではあるが先人たちの力で顧客を獲得し地道に営んで法人化。しかし、今回だけは業績悪化が大変なことになっている。 最近自分の手の震えとか体の変調 「そんなこと言えないでしょ」 「なら私が自分の首を最初に切る」 「卑怯だそんなの」 なんか体の異変が始まる。 「いや、まだ手があるはずだ。ちょっちょっ。あぁぅぁぁっ」 突然目の前が暗くなった。 耳元に「社長、社長」「救急車呼べっ」 など声が聞こえていたが、じきにそれも聞こえなくなった。 暗黒が続いた。漆黒と静寂。 そして前方のほうから糸のような明かりが見えた。 <<ファーーーン>> 明かりの向こうはトンネルの出口だった。山々に汽笛がこだまする。 エアコンのない電車。回る天上の扇風機。開け放った窓。 <<ガー>> <<コゴン コゴン コゴン コゴン >> 鉄橋を渡り始めると川辺に子供たちが水遊びをしている。 「おーーーい」 むかって手を振っている。そういうのが楽しいのだろうか。 ふと自分の体を見回してみる。 「えっ、あれっ おぉ」  高校生ごろの体つきだろうか若返っているる  さっきなんかで倒れて。それからそれから。 自分の名前は、俊之、としゆき。そうだ。ちゃんと覚えている。 <<チリリリリリリ キンコンキンコンキンコン キコン>> 「まもなく、鈴野金川 すずのかながわ です。交換列車待ち合わせいたします。15分ほどお待ちください」 なんて待つんだろうと窓の外をボーとみていたら。 「こっちだ。トシにーちゃん。俊和、としかずニーちゃん」 「トシちゃん?としかず?」 「こっちこっち」 中学生一年だろうか、いかにも夏休み元気に遊んでいます。おばあちゃんの家に来ていますの全力少年がいる。  それに俊和は小さいころに亡くなった父の名前じゃないか。 「降りてよ、つかれてボーとしているんでしよ」 「あ、ああ」  仕方なく他なの自分の荷物。どっちみちボックスの椅子は自分しかいないから僕のだろう。その荷物を持って駅に降り立った。  ムワっとする暑さ。電車の下からの熱と太陽からの照り付ける光、蝉の声。そしてかすかな田んぼのカエル。 「どうした、去年来たでしょ何も変わっていないでしょ」  僕は駅員さんに切符を渡そうとしたら。 「お客さん、その切符は帰りまでお持ちください」 「えっ、なんか特別なの」 「そういうものです。満月の盆踊りの時にこの駅に来てください。その時にご乗車になる電車が来ます。」  おかしなことを言う駅員さんだ。  しばらくすると反対側から電車がやってきた。ホームにつくとなにやら方に輪っかをかけたカバンのようなものがある。 「なんだあれ」 「ああタブレット」 「タブレットって平たい板みたいなものでしよパソコンの」 「違うよ、あれは通行手形みたいなもの。単線でしょ、ぶつからないようにアレで駅と駅確認して一つの列車しか通さないようにしているの」 「ところで君は誰だっけ」 「んもー、トシにーちゃん博司、ひろしだってば」 「でどこ行くの」 「そーと疲れているね、おじいさんとおばあさんの家」  田んぼが続く未舗装の道を進むと赤い屋根の少し大きな家があった。小さな玄関を入ると、家の前は道路でお店があるようだった。 駅前が商店街でなく街道筋が小さな商店街。不思議なまちだ。 「ただいまぁ」 奥からは高校野球のテレビの音。風鈴。 「おーいらっしゃい」 「え、あの」 「俊和、高校はどうだ」 「えっまぁ、なんというか」 「じゃあとりあえず、ひとっぶろ浴びて着替えてくれ」 なんと言えばいいのだろうか。とりあえず汗を流そう。 「おばぁちゃん。わたしのタオルしらなーい」 「風呂場じゃないの」 「えっ」 ガラっと音がしたと同時に女の子。ん女の子が。戸を開けて。 「キャァーー俊ニィ、入っているなら言ってよぉおお」 「す、すまん」 すまん? だまって開けるのがいけないだろ。 「ふぅ」 「さっぱりしたか、ちょっといいかな」 おじいさんとおばあさんが奥の和室に案内した。 「俊和でないだろ」 唐突に言われた。 「はい俊和は私の父です」 「ふむ、またあの言い伝え」 おばあさんがつぶやく 「そうじゃな」 おじいさんがうなづく。 「あ、あの、私はどうなっているんですか。異世界転生しているんですか」 「異世界転生かどうかは知らん。お盆の盆踊りのあたりになるといろいろと不思議なことが起こる」 「第一父の俊和は」 「旅行に出た。ただ旅に出るとだけ言ってな。もともとそういう子だが。この辺では珍しいものでない。もうそろそろ戻ってくるだろ」 「けど、けど」 「言いたいことはわかる。前も同じような形で俊和がやってきた、その名は自分の親だと。自分の親は幼いころに亡くなっていたと」 「というと矛盾が」 「世の中にはわりきれないものものある」 おばあさんがいった。 「ところでなにか持っているか」 「えっとこれですが」 「ん、あの切符か。またその季節なんだね。満月の盆踊りまでゆっくりしていきなさい」 「あ、あの」 「これから夕方の食堂の仕込みだよ、こんな田舎でもそこそこお客様がくるんでな」 「もしかして、あなたは善之助」 「そうだ」 「ウチの会社、遠山フーズの創業者の遠山善之助」 「そうだがどうした」 「体は若いですが、現社長の遠山俊之」 自分で変なこと言っているのだが事実だ。 「おおっ孫になるのか、どうなっているんだ店は」 「そ、それが…」 「まあよい。少し休んでおいで。あとで賄いだけど食事するから」 僕はそのあと居間に向かった。テレビは高校野球が終わりなにか歌謡番組がやっている。 「あ、あの」 さっきの女の子 「えっとだれだっけ」 「美里です」 「いいやぁ」 「けどなんか変」 「そぉ」 「いつまでいるの」 「そんなにいないと思う。ここの盆踊りのころまで」 「あと2日じゃん。せっかく高校の宿題手伝ってもらおうと思ったのに」 「えええーーー」 夕焼け小焼けのメロディが火の見櫓から流れる。 お店の夜の部の営業がはじまったようだ。 そっとお店側を除くと、席はほぼ満席。一体なんでだろう。 いっては悪いが田舎なのにお客さんが入るのは。 「ごめんねぇまかないだけど」 と目の前に出されたのは那須野煮びたしとトウモロコシ。 あとニンニクとブタニクを適当に炒めた何か。 けど、すごくうまい。 そのあと混乱見あってか用意されたパジャマで布団に入った <<ウウウウウウウウーーー>> 朝、6時サイレンが鳴った。火事。 火事にしては消防車の音がしない。 集団目覚ましのサイレンだった。 目覚めても若いから多勢のままであった。元の体も心配である。 <<トントントン>> 規則的な音がお店のほうから聞こえてくる。 着替えて厨房に行くとおじいさんとおばあさんが仕込みをしている。 「手伝いましょうか」 と自分が言うと 「あらまぁ、いいのに」 おばあさんがいった。 「やりたきゃ、あっちで着がえて、手洗いして、靴変えてな」 おじいさんがいった。 「はい」 創業者とは形はどうであれ一緒に居るのはとてもありがたい。 まして今の会社の業績不振の原因突き止めるためにもだ。 「ところで俊和、いや本当は俊之か、なんか調理の免許あるのか」 「いや、もっていませんけど、盛り付けぐらいは」 「じゃぁ食器の用意とか盛り付けとか洗浄頼む」 「あらできたら配膳と会計も」 「いいですよ」 「素直な社長だこと」 「その前に孫だ」 「げと無茶しないでな」 まあ久しぶりに厨房入るのもいい。確かに体力は使うが。 「開店30前盛り付けして冷蔵庫に入れられるの、用意するぞ」 おじいさんはそう言って菜箸をわたした。 「これに野菜の付け合わせ小鉢な」 ここからが本番だ。 「おっとその菜箸、テキトーにおいていいかな。面倒でないか取るとき」 「えっ」 「使うものは定位置に置いといたほうが楽だけど」  なるほど、小さな差ではあるが、おじいさん、おばあさんの使う菜箸とか包丁とか向きがそろっている。ウチの会社どうだったか。 「地道なことだけど、整理、整頓、清潔、って大切なの」  確かになんだが。それができないんだと思っていたら 「ただね、一気にかたそうとするのは無理だから毎日やるのも大切」 「まだ自分会社のこと言っていないですけど…図星しのところが多い」 「ふふふ」 「まあまずはうちらの動き見て覚えておくんだね」 「さて開店だよ。しばらくしたら洗浄もお願いね」  確かにキツイがなにか忘れかけていたことがある。利益を追求するために何かを削りすぎていた。それが何かがわからない。 「ふぅー」 遅いお昼休みがようやく来た。冷たいキュウリにゴマダレがかかったもの。販売で残ったカレーに野菜とツナ缶いれたものでチャチャっと。さて一休み。 「トシにーちゃんクワガタ取り行こうよ」 「少し休ませてよ。それより楽な取り方教えるから」 「俊ニィ宿題の手伝いも頼んだね」 結局二人の願いを受け入れることになった。 ふぅ全く。けどなぜここに呼ばれたんだろ。誰が。 「俊之 俊之 俊之」 「んんんんん」 窓の外から物陰が 「だ誰だっ」 「静かにっ、一緒にこっちに来ることはできない」 「誰っ」 「俊和だ」 「父さん」 「大声出すな。近づくのはこれが限界だ。僕は特別な能力をもっていたようだ。それをちょっとばかし使った」 「ならなぜ直接開始の業績どうすればいいか教えてくれないの」 「いやぁそっちの才能はない。じいさんの身振り手振り見るがいい。行くよ」 「父さん」 アルバムの中でしか見たことのない父さん。声だけ残して消えた。 「どうした」 おじいさんが尋ねると今会ったことを伝えた。 「そうか。あともう少しで本当の俊和が返ってくるきみと入れ替わりにね」 「どうして」 「それがここの理なの」 おばあさんが言った。 「さてと帳簿つけて寝るかの」 おじいさんはそう言ってそろばんを手に取り請求書とか伝票を計算し始めた。 おばあさんは夜の営業後の片付けしている。 「。じゃこの帳簿のつけ方わかる」 「はい」 これでも古い人間だ手台帳のつけ方はわかっている。 久しぶりなので電卓の打ち方は遅いがそこそこ打てた。 「ところでこの帳票からなんか感じないかな」 「いや今日が初めてなので」 「ま。今日だけだとわからないけどね。実際毎日眺めてくると変な数字に気づくこともある。また別の人に確かめてもらうのも必要だし」 なにかギクリと見透かされたかんじがした。毎日見てる数字本当の数字だろうか。集計の仕方で場合によっては良くも悪くもできる。数字は正直もというより、数字は生きている。生きている本当の数字が必要なのだ。 「なんだかこの数日でいろんなこと言われたような」 「そうかな」 「わたしの代わりに戻って会社立てなおしていただきたい」 「それはできない。そういう理だ」 「…そうですか」 「おかげで集計が早く済んだわ。今日の成績は、そこそこだな。あとは閉店間際に最後の一つが売れ残るようにしないとな」 「機会損失をなくす、ですね」 「なんだそりゃ」 「まあいい。明日が最終日か。月夜の盆踊り」 「もっと居たい気もするしけど自分の体と会社も」 「だな、そうそう、明日の盆踊りの前に試作メニューあるんで食べていくか」 「ぜひ」 昼の営業前のわずかな時間試作品を作ることとなった。 「ところでこのお店意外とメニュー少ないんですね」 「そりゃそうだろ、ばーちゃんと二人でまわすんだから、本当にお客さんに喜んでもらえるものしか出してないよ」 「ウチのは種類多いけど」 「その考え方もあるけど、材料をどう使いこなして種類増やすのもアリだよ」 「そうですか」 「とはいうものの、新しいメニューないとね。これからつくるクリームシチュー」 「へぇ」 「多少てまだけど、ウマイはずだ」 そんなにしないうちにできあがった。 「鶏肉が臭くなく、牛乳も乳臭くなく、程よいとろみ」 もう一口入れて 「んんんまぁぁぁい」 「だろおぉぉぉー」 そうこうしているうちに昼の営業が終わり、遅い昼休み。 「今夜帰っちゃうんだね」 博司君が言った 「ああ」 「ねえこの浴衣どお」 美里さんがこちらにニコっとわらって入った。 「…いや、その」 「どうしたの」 「親戚にこういうのはなんだけどドキマギして」 「で」 「きれいです」 「きゃっ」 そんな彼らともお別れなのだ。 持ってきた荷物と切符をたしかめる。 切符がある。 夕焼け小焼けの音にまじって盆踊りの音がするる 初めて聞く生歌の物悲しい肉声の盆踊り。 踊りひとつ一つに意味があるのだろう。 博司君美里さんはまた来年会えるのと思って盆踊り会場に出かけてしまった。僕は駅に向かった。 <<デェーンデェーンデェーン>> 赤く四角い機械から音がした。 「まもなく草影駅方面出札を開始します」 パチンパチンと切符を切る音がする。 電車がやってきた。夕暮れ時にライトを照らしながら電車がやってきた。 河原そばにちょっとした広場がある。 開いている窓から、もの悲しい盆踊りの肉声が聞こえる。 鉄橋を渡り、トンネルに入る。 漆黒と静寂。 その先にか細い光が現れた。 「社長、遠山社長」「あなた」「父さん」 声が聞こえる。 「ん、んんん」 「遠山さん成功しました」 「会社 会社は」 「今はご自身の体が第一です」 「ひとつだけいっとく、私がなくても回るようにしてくる」 「ですが社長」 「とりあえず社員・関係者に事実を伝えよ。生の数字伝える全員にだ。ここから始める」 「そうそうなんかメニュー試作とかあったな。邪魔じゃなかったら混ぜてくれないか」 「いいですけど、何かアイデアあるんですか」 「クリームスープさ。」 まだ先が長いのはわかっている。ただ一歩今踏み出したところだ。
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