338人が本棚に入れています
本棚に追加
錬金術と魔法
「お嬢様!ドアをお開けください!!」
ドンドンと力強く叩かれるドアにチラリと目を向けたけど、全く開ける気はない。
ちなみに魔法で鍵掛けてあるので物理的には開かない。
魔法の教師なら魔法使って開けてみろやマ·ホ·ウ!
…魔法に興味はないんだけどある程度は勉強したから、教師がドアに魔法を当てたらドエライ惨状にはなるかもだけどさ。(邪悪だな(笑))
私に合わせた小さな白い椅子に座って、ガラステーブルの上のティーセットをノンビリ楽しむ。
すると
「リィお嬢様。先生追い出したらダメだと思いますよ?」
私付きのメイド"カナン"が恐る恐る声をかけてきた。
………カナンって確か13歳って聞いてたけど、なんか老け込んでないか?
ブロンドの綺麗な髪がへたってるし肌も黒ずんでるし。
でもカナンが続けた言葉に、ちょび~~~~~っとだけ悪いことをしたなぁ。と思った。
「お嬢様付きのメイドはお給金は頗る良かったけど、胃が!胃が痛くなるのです…!教師を追い出したのは何人目でしょうか…。伯爵様より『魔法教師を追い出させないでくれ。良いか?絶対だぞ?!』って厳命されているのに…。次に追い出されるのは私かもしれません…」
私はコクンと一口お茶を飲むと
「大丈夫大丈夫!カナンは追い出さないよ!…魔法教師ってさ、全力で魔法を使わせたがるんだよね~。限界まで使わないなら勉強してもいいんだけどさ。限界までまで使うと"錬金術"が使えないもの」
するとカナンが困った顔をした。
「…お嬢様。貴族は"錬金術"は使いません。お願いですから魔法のお勉強だけを…!」
私はプイッと横を向いた。
高温でただただ真っ黒に焼くだけのオーブンなんぞ、使い途がねぇんだよ!
低温で長時間じっくり焼く錬金術(オーブン)の研究がしたいんだ。
「…なんで錬金術に填まってんだよ?ドアに掛けてある悪質な魔法からして、魔法が使えない訳じゃなさそうなのに。変わった魔法が使いたいなら"てりやきばぁがぁ"三つで教えるぞ?」
「「ひゃあ?!」」
ガラステーブルの向こう側からいきなり聞こえた声に、私も後ろから声が聞こえる形になったカナンも声をあげた。
「ディー!(前に愛称で呼ばないと王宮に帰らないと居座られたのでディーと呼んでいる)女の部屋に許可なく入ってくるんじゃないって、いつも言ってるでしょーが!!!…ったく。魔法の"穴"を見つけるの、兄様より上手いんだよなぁ…」
私がギャンギャン喚くとカナンが
「アルディード様!いくらリィお嬢様が5歳のお子様でもお口が悪くても、一応!女性です。お嬢様のお作法が底辺であっても、殿下まで底辺になられたら困ります!!!」
………なんだろ?
いきなり泣きたい気分になったよ…。
最初のコメントを投稿しよう!