閑話~アルディード~

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夜ルテシー辺境伯一家(マリアナ夫人は体調不良で王都に来てないが)と晩餐を終えて、俺は父上の私室を訪ねた。 辺境伯と交渉して、あの美味しい食べ物のレシピを貰うためだ。 ところが…。 「…ほらレシピだ。だけどなぁ…。本当に美味しかったのか?コレ。城のコックに作らせたんだが対して美味くないぞ?」 そう言って昼間に食べたモノとは似て非なるモノを、イソイソと出してきた。 …うん、似て非なるモノだ。 どう見ても固そうだ。 ガチガチだ。 食べなくとも解る。 レシピを見ても理解できない材料が書いてある。 照り焼きバーガーレシピ ソース材料 ソラの種を擂り潰して塩をソラの種の量の5%を混ぜる。 一晩冷暗所に置く。 使うときに温めて小麦粉でとろみをつける。 白いソース ペル鳥卵黄、ミラ花油とミラ花酢をひたすら混ぜて塩で味を調える。 肉 二種類か三種類の肉をミンチにして焼く。 丸パンを横に切ってセタの葉と一緒に焼いた肉を乗せて、ソラソースを掛けて白ソースをポタリ。 上半分のパンを乗せて出来上がり。 ………ソラの種? あのガチガチモソモソの、馬の餌? 馬……………………まぁ、いいか。 美味しかったから。 それより。 「父上。ソラソースがまず無理なんじゃないですか?」 と聞くと 「いや、それがな?リリティーゼ嬢が瓶で持ってて、その瓶くれたんだ」 「…勿体ないな」 だってここにある物体は、どう贔屓目に見ても失敗作。 食べたくない。 あぁ、ソースが勿体ない…。 「ソースがとんでもなく美味しかったがそれだけだ。肉とパンに調和がない」 俺は頷いた。 晩餐で "うえ~、マズイ" と口パクやっていたリリティーゼ嬢だ。 王宮に留めておけばおそらく厨房に乗り込むだろ。 美味しい"てりやきばぁがぁ"が、きっと食べられる! 「父上!ルテシー辺境伯一家を王宮に留めてください!」 俺のお願いは叶った。 そして毎日リリティーゼ嬢の元へ行って "お願い" することになったのだった。
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