第12章 語られた想い

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八雲が手術室の前に来たとき、丁度赤いランプが消えた。 どうやら手術が終わったらしい。 ガラガラと音をたて、ストレッチャーに乗った恵愛が運び出される。 麻酔が効いているのか、眠っていた。 「ご家族の方ですか?」 「いえ、仕事関係の知人です」 看護師と一緒に病棟へと上がっていく途中で聞かれた。 「そうですか。では、詳しい話はご家族が来てから先生を呼びますね」 どうやら、病状説明のための確認だったらしい。 八雲は小さくため息をついた。 恵愛が運ばれた病室はナースステーション近くの個室だった。 警察関係者の出入りがあるのを考慮してくれたらしい。 「傷は内臓まで達していなかったし、止血がしっかりされていたから輸血をする程の出血でもなかったのよ。点滴での補液は必要だけれど」 看護師は説明しながら点滴の交換をする。 新しいパックを点滴台に下げ、思い出したようにサイドテーブルから書類を取り出した。 「家族の人が来たら書いて貰って欲しいのだけど」 入院に関する書類を手渡される。 困惑する八雲だが、看護師はさっさと退出してしまった。 そっとため息をついて、八雲は今後のことを考える。 今回の加害者――事件の犯人である愛夢。彼女は加害者であると同時に被害者だった。 恐らく、彼女の口から事件の全てが語られる。そして、彼女の出生に関することも。 警察はどこまで調査するのだろうか。 (もし、七瀬愛夢一人の犯行として片付けられ、彼女が死刑になったら全てが闇の底に葬られてしまう……) その可能性もゼロでないことを八雲は知っている。
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