141人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
序章 落下する少女
――コツ、コツ、コツ、コツ。
足音が追いかけてくる。
少女が止まると足音も止まり、歩き出すとまた足音がついてくる。
振り返っても誰もいない。
「――っ!」
気味が悪くなった少女が走り出すと、足音も同じくらいの速さで追ってくる。
何とも言えない恐怖に駆られ、彼女は目の前のドアを押し開けた。
隣のビルに面した非常階段。
少女は“ソレ”から逃げるように階段をかけ降りていく。
――カン、カン、カン、カン。
金属の音が響く。
足音はまだ追ってきていた。段々と近づいてきている。
焦りながら逃げる少女だが、遂に追いつかれてしまった。
「きゃあっ……」
喉の奥から零れる悲鳴。
身体に走る衝撃。
伸ばした手……指先は手すりを掠め、少女の体は宙へと投げ出された。
落ちていく少女。帽子を目深にかぶった男が彼女を見下ろしている。
その人物の顔を見る間もなく、少女の体は重力に従い落下していった。
.
最初のコメントを投稿しよう!