序章 落下する少女

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序章 落下する少女

――コツ、コツ、コツ、コツ。 足音が追いかけてくる。 少女が止まると足音も止まり、歩き出すとまた足音がついてくる。 振り返っても誰もいない。 「――っ!」 気味が悪くなった少女が走り出すと、足音も同じくらいの速さで追ってくる。 何とも言えない恐怖に駆られ、彼女は目の前のドアを押し開けた。 隣のビルに面した非常階段。 少女は“ソレ”から逃げるように階段をかけ降りていく。 ――カン、カン、カン、カン。 金属の音が響く。 足音はまだ追ってきていた。段々と近づいてきている。 焦りながら逃げる少女だが、遂に追いつかれてしまった。 「きゃあっ……」 喉の奥から零れる悲鳴。 身体に走る衝撃。 伸ばした手……指先は手すりを掠め、少女の体は宙へと投げ出された。 落ちていく少女。帽子を目深にかぶった男が彼女を見下ろしている。 その人物の顔を見る間もなく、少女の体は重力に従い落下していった。 .
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