141人が本棚に入れています
本棚に追加
花怜は杏子と連絡先を交換していた。
sweet holicのファンである花怜だが、彼女もまた音楽活動をしている。
年も近く、共通の話題も多いことからすぐに打ち解け、仲良くなった。
「人懐っこいのが花怜の強みですよねぇ」
八雲が呟く。その横で透が苦笑している。
人見知り気味な彼女にとって、今日会ったばかりの人間と連絡先を交換するなど、考えられないことだった。
遠い目で彼女たちを見ている大人二人。
その時、事務所のインターフォンが鳴った。
「こんばんは、お届け物です!」
宅配業者の青年が段ボール箱を抱えて事務所に入ってくる。
冷蔵マークのシールが貼られた段ボールが、次々に運び込まれた。
大きいもの、小さいもの、合わせて八個ある。
「透!」
嫌な予感を覚えた八雲は、透から手袋を受け取り段ボール箱の宛名を確認する。
『さとう音楽プロダクション 気付 sweet holic ざらめ様』と杏子宛の荷物だった。
差出人は『霧崎悠人』。
「霧崎からです」
八雲が呟いたその名前を聞き、杏子は目を見開いた。
怯えた表情で、隣にいた花怜の手を握る。
「透、警察に電話をお願いします」
そう言って八雲は段ボール箱の一つに触れた。
手袋越しでも強い感情が伝わってくる。
最初のコメントを投稿しよう!