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残りの段ボール箱は警察に任せることにし、再び開けた段ボールに手を伸ばす。
意識を集中させると、手袋越しに段ボールに触れた。
不快なノイズが走り、憎悪の感情と共に記憶が流れ込む。
フラッシュバックで見た記憶は、遺体を解体している所だった。
ホラー映画のワンシーンのような光景に、吐き気を覚えつつ、霧崎の首を切断している人物が八雲の脳内に直接映り込んでくる。
なんと、霧崎の遺体をバラバラに切断しているのは霧崎と同じ顔の人物だった。
有り得ない光景に息を飲む。遺体が霧崎ならば、犯人が霧崎であるはずがない。
「どう、して……」
耐えられなくなり、倒れそうになった八雲を支えたのは透だった。
透を押し返す気力もなく、八雲は今見た光景を脳内で再生していた。
(霧崎が二人? ありえない。どちらかが偽者?)
ぐるぐる巡る思考は吐き気を強くする。
「透、霧崎の遺体を……首ですけど、見てもらっていいですか?」
医師である透に頼み、首の状態を確認してもらう。
透は医療用の使い捨て手袋をはめ、段ボールの中から霧崎の首を取り出した。
皮膚や、瞳の状態を確認していく。
「……八雲、これは本当に霧崎悠人なのか?」
透の口から、八雲が考えていたことと同じ疑問がでた。その理由は……。
「この頭部は死後数日が経過していると思われる。冷凍保存されていたのか腐敗はそれほどでもないが、少なくても今日殺されたわけではないだろう」
つまり、この霧崎の遺体は、杏子を突き落とした霧崎と思われる男と別人であるということだ。
透はそれ以上何もせず、頭部を段ボール箱に戻す。
詳しく調べるのは警察に任せた方がいいだろう。
いつも協力している地元警察の管轄ではなく、警視庁の管轄なのだから、尚更勝手に動くことはできない。
八雲と透の二人は、隣の部屋で杏子たちと警察の到着を待つことにした。
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