第2章 奈落への誘い

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最寄りの警察署から、警察官がかけつけたのは、透の通報から約十五分後だった。 その中に片瀬の姿もある。 ストーカーしてきた相手からの宅配物と言うこともあり、『ストーカー対策室』の彼女も呼ばれたらしい。 警察を待つ間、花怜や杏子、佐藤に状況を説明しておいた。 杏子や佐藤は気分を悪くしてしまったようだが、隠しておけることでもないので仕方がないだろう。 少し遅れて警視庁の刑事と鑑識が到着した。 刑事や鑑識と一緒に、八雲と透が先程開けた段ボールを確認する。 「…………っ!」 手練れの刑事たちも言葉を飲み込み、息を止めた。 黄色い薔薇と人間の頭部。 死体に慣れていない新人刑事が耐えきれず部屋を飛び出していく。 刑事ドラマのような猟奇的な死体に、誰もが黙って作業にかかる。 他の段ボールを刑事と鑑識が開けていく。 そこには、切断された腕、脚、胴体がいくつかのパーツにわけで入っていた。 「……黄色い薔薇に、黄色いチューリップ。よくない花言葉ですね」 黄色の薔薇の花言葉は『嫉妬』で、黄色のチューリップの花言葉は『望みのない恋』だ。 花言葉が関係しているのなら、それは犯人からの強いメッセージと言えるだろう。 「有栖川さん、天神さん」 片瀬が二人に声をかける。 その後ろには彼女より少し年上と思われる女刑事が立っていた。
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