第2章 奈落への誘い

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女性刑事が一歩前に出ると、片瀬は別の刑事のところへ向かった。 「警視庁捜査一課の小柳(こやなぎ)です。本事件の担当になりました」 小柳は警察手帳を開き二人に見せる。 八雲と透は頭を下げて応えた。 「後程お話を聞かせてください」 小柳はそう言って持ち場に戻っていく。 警察の到着を待たずに段ボールを開けてしまったため、その時のことを話さなくてはならなかった。 「うわっ、これは……」 大きめの段ボール箱の中身を確認していた鑑識官の呟きが耳にはいる。 段ボールのから取り出されたのは、男性の胸部だった。 肋骨に沿って切り取られた、いびつな形の体。 テラテラと皮膚とはどこか違う光沢を放っている。 「合成樹脂を使った、人体標本……?」 合成樹脂と思われるもので塗り固められた体。 一般人にも手に入りやすいレジンだろうか。 別の段ボールから取り出された腕は、また違う光沢があった。 合成樹脂のようなテカりはなく、肌の質感に近いが……。 脚も腕同様、遺体の変性があるようだ。 鑑識官たちは写真にその状態を収めると、取り出して遺体の確認を始めた。
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