第1章 追われる少女

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第1章 追われる少女

ゴールデンウィークが終わり、世間は慌ただしい日常へと引き戻されたようだ。 よく晴れた空。風は爽やかだが、日差しが眩しい。 長袖で外を歩いていると汗ばむ陽気だった。 東京都千代田区。秋葉原駅に向って、スーツ姿の男女が並んで歩いている。 長い黒髪の女は涼しい顔をしていた。ローヒールのパンプスで足取りも軽やかだ。 彼女、天神八雲(てんじんやくも)は、隣を歩く男性・有栖川透(ありすがわとおる)と共に、都内で開かれた学会に出席していた。 八雲は、研究学園都市内の研究所で遺伝子に関する研究を行っている。 対して透は大学病院に勤める救急科の医師だ。 二人は幼馴染みであり、恋人同士に見られることもあるが、実際は兄妹のような関係なのだ。 「花怜(かれん)との待ち合わせには間に合いそうですね」 八雲がぽつりと呟いた。花怜と言うのは彼女の同居人で、生活能力が壊滅的な八雲の代わりに家事全般を担っている。 放っておくと食事も睡眠も取らなかった八雲は、花怜との同居を始めてから規則正しい生活ができるようになった。 そんな花怜と二人が待ち合わせている場所こそ、秋葉原駅だった。 花怜も所用で東京まで来ているらしく、一緒に帰るために駅で待ち合わせの約束をしている。
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