第2章 奈落への誘い

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警察の出入りもあり、足止めされたままに時間は過ぎていく。 透は上司に連絡をいれ、明日の勤務を変わってもらったようだ。 八雲がスマートフォンで時間を確認すると、既に八時を過ぎていた。 「お待たせしました。天神さんと有栖川さん、お二人に遺体発見時のことを窺わせてください」 小柳がもう一人の刑事を伴って二人に声をかけた。 段ボール箱に入った遺体は既に運び出されている。 恐らく、解剖に回されたのだろう。 「宅配業者が運んできた段ボールの荷物の宛名を見て、天宮さんのストーカーと思われる霧崎悠人が差出人だったため、私が開けました」 八雲が簡潔に説明する。 小柳は片瀬からストーカーの件を聞いているようで、簡単にメモを取った。 「ストーカーがエスカレートすると動物の死骸などを送りつけてくることがあると聞いたので、確認のために」 汚物などを送り付けるケースがあると警視庁のホームページにも載っている。 フラッシュバックのことは伏せて、事実だけを説明した。 「中身は見ていたただいた通り、人の頭部だったため、透……有栖川さんに警察へ連絡をお願いしました」 八雲はちらりと透を見ると、頷いて肯定を示した。 小柳がさらさらとボールペンを走らせて内容を書き留める。
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