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八雲に電話を掛けてきた相手は、彼女の養父だった。
「綾瀬さん!? どうしたんですか」
八雲の養父・高見沢綾瀬は、国の研究機関に出向しているはずだった。
自分の研究所を養女に任せるくらい大きな研究を任されているはずなのだが。
『なんだ、八雲か。間違えた』
電話の向こうの声はのほほんとしており、綾瀬のマイペースさが窺える。
さすがの八雲も小さく歯軋りした。
「わざわざ電話してきて間違い電話でしたってなんですか……」
あきれ半分、苛立ち半分に八雲が呟く。
一方の綾瀬はのんびりした様子で謝ってきた。
『んー、じゃあ、八雲から伝えてもらおう。県警から依頼のあった薬物の鑑定の件だが、どうやら新種のアルカロイドのようだ。ケシのものに近いようだが、まだ特定には至っていない』
綾瀬の説明に耳を傾ける。
ケシに近いアルカロイド……つまりそれは。
「新しい麻薬の類いですか?」
『その判断は私がすることではないな』
八雲の問いかけに答えた綾瀬は、そのまま電話を切った。
正確にはブツリと切れた。
機械音痴な綾瀬が電話を壊した可能性を考えた八雲だが、調べようがない。
ため息を吐いたとき、隣の部屋から見知った人物が入ってきた。
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