第2章 奈落への誘い

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茨城県警管轄の事件では、事件発生後に呼ばれることがほとんどだ。 今回のように第一発見者として、事件に関わったことはない。 「ああ、そう言えば鳴神さん。先程、養父(ちち)から連絡がありまして、先月の事件の犯人から検出された薬物……新種のアルカロイドではないかとの事です。詳しくは後日資料を送らせていただきますね」 八雲は綾瀬から電話で聞いた内容を、簡潔にまとめて伝える。 事件の犯人から検出された薬物は興奮剤のようなものだったが、一般に流通しているものではなく、その特定が急がれていた。 「ありがとうございます。では、その件は後程」 そんな恵愛と八雲のやり取りを、小柳は面白くなさそうな顔で見ていた。 咳払いをし、彼女は二人の間に割って入る。 「もう、あなたが何者でもいいわ。でも、警視庁管轄下の事件である以上、勝手な行動をしないでちょうだい!」 キッと八雲を睨み、小柳はきつめの口調で強く言った。 だが、八雲が女性にしては背が高いため、見上げるようになっていまい、いまいち迫力が足りない。 「はい、ご迷惑をお掛けしないよう気を付けますね」 面倒事にならないよう、八雲は素直に返事をした。 それが小柳にはまた面白くなかったらしい。 険しい表情のまま、八雲を睨んでいる。
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