第3章 夜想曲は誰が為

3/12
141人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
八雲は取り敢えず、花怜が買ってきた洋服を確認することにした。 大手のカジュアル系ファッションブランドの袋から、衣類を取り出す。 「……花怜、何故、メンズなんですか?」 下着、肌着はレディースが入っていたのだが、シャツとジャケット、パンツはメンズのようだ。 八雲に言われ、花怜はくすりと笑った。 「先生の身長だと、レディースよりメンズの方が合ってるかなって。あ、ちゃんとサイズは確認してあります! 先生の体型に合わせて購入しました」 目を輝かせてそう言う花怜に八雲は何もつっこめない。 花怜のペースに慣れてきたのか、杏子は苦笑している。 「確かに、私は身長がある方ですけど……」 花怜は普段から八雲に男物の服を着せたがっている様子が見られていた。 服に(こだわ)りのない八雲だが、流石に男物の服を着ることに抵抗を感じていたのだ。 「大丈夫です、絶対似合いますから!」 八雲としては、似合う似合わないの問題ではないのだが、花怜に押し切られため息をつく。 着慣れないスーツを連続で着る気になれない、というのもあるのだろう。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!