第3章 夜想曲は誰が為

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花怜の記憶力は視覚からの情報だけでなく、嗅覚、聴覚、触覚、味覚……五感全てで感じたものを正確に記憶する。 記憶というか、記録と言っても問題ないであろう正確さなのだ。 「花怜、ちょっと相談なんですけれど」 何か思うことがあったのか、八雲が口を開く。 「化粧で他人とそっくりな顔って作れますか?」 花怜への質問は、フラッシュバックで見た霧崎を解体する霧崎――どちらかがそっくりな人物だろう――それを踏まえてのことだ。 一卵性の双子は恐らくないと、八雲は考えている可能性から排除した。 花怜は首を傾げ、何かを考えている。 八雲の言いたいことが上手く伝わっていないようだ。 「ある人物やキャラクターに似せてメイクするってことは出来ると思いますけど、全く同じように再現するなるとどうなんだろう?」 メイクやコスプレが得意な花怜。 彼女は首を捻って考える。 「試しにやってみます?」 悩んだ末、そう答えた花怜の手にはメイク道具が握られていた。 自分でメイクを……という感じではなく、視線は八雲に向けられている。 八雲は少し悩んだ末、首を縦に振った。
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