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少女が目覚めるのを待っている間、八雲と透は早坂という女性警察官に転落時の状況を説明した。
透が見た男が関係している可能性も考え、その情報を他の警察官とも共有してもらえるようにお願いする。
そうしている間に少女が目覚めたようだ。
「う……んっ……」
口から漏れた小さな呻き声。閉じられていた瞼がゆっくりと開く。
何度か瞬きをした後、少女は慌てて起き上がった。
「急に動かない方が良い。気分が悪いとか、どこか痛いところはないか?」
医師でもある透が少女に話しかける。
少女は辺りを見回すと、病院だということに気付いたのか少し落ち着いたようだ。
「大丈夫です。ありがとうございます」
少女の声は小さかったが、良く通る声だった。
困ったように眉を寄せて俯く彼女に今度は八雲が口を開く。
「まず、あなたのお名前をうかがっても良いですか? 私は天神八雲、こちらは有栖川透」
怯えた様子の少女に、普段あまり見せることのない柔らかい微笑みを浮かべ、八雲は自己紹介をした。
名前を呼ばれた透も頭を下げ、お辞儀をする。
二人の丁寧な対応に、少女の顔から少しだけ不安の色が消えた。
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