第3章 夜想曲は誰が為

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八雲は感心したようにため息を漏らす。 「ああ、それは盲点でした。あの遺体が霧崎だと断定でき次第、身辺調査が行われますよね」 交流のあった人物などから任意で事情聴取を行うのだろう。 霧崎の自宅を調査できれば早い気がする八雲だが、被害者の家宅捜索は通常行われない。 「とりあえず、詳しいことは明日にしましょう」 『それなら、明日八時頃に迎えにいきます』 「わかりました」 疲れてきた八雲は電話を切り上げ、明朝会う約束を取り付ける。 通話を終えてため息をついた八雲を、花怜がにやにやしながら見ていた。 「鳴神さんとデートですか」 「事件捜査です!」 聞いてきた花怜をその一言で黙らせ、八雲はシャワーを浴びに浴室に逃げ込んだ。 「先生、ごはんはー?」 ドアの向こうから花怜の声が聞こえる。 「ルームサービスで好きなものを頼んでください。天宮さんも。私は要りません」 「はーい!」 返事聞き、八雲は再びため息をつくと熱いシャワーを浴びるため、服を脱ぎ始めた。 四月の事件で犯人に掴まれて出来たアザも既に消えている。 (今回の事件ももしかしたら……) シャワーを浴び終えた八雲は浴衣に着替え、部屋へと戻った。 ソファーに座り、花怜達の話を聞きながら、いつのまにか眠りに落ちていく。 「もう、先生ったら」 例のごとく、花怜はタオルケットを持ってきて八雲にかける。 どちらが年上だかわからないなぁと、思いながら杏子はその様子を見ていた。
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