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杏子の様子を見て、透と顔を見合わせた八雲はある可能性に思い至る。
「もしかして、追いかけられるのは今回が初めてではないのでしょうか?」
疑問形で訊ねている八雲だが、それは事実なのだろう。
杏子は目を閉じて俯くだけだ。
「ストーカー、と言うことかしら?」
早坂が結論を口にした。
それを聞いた杏子の肩が震える。
追いかけられて突き落とされただけでも怖いはずだ。
それが日常的にあったのだとしたら……。
「ストーカー案件だと、他の部署とも連携を取らないといけないわね」
早坂はそう言って部屋を出ていく。
警察署のストーカー対策の部署に連絡を取るためだろう。
部屋には杏子、八雲と透の三人になった。
俯いたままの杏子にかける言葉を探すが見つからない。
思案している八雲のスマートフォンに着信があった。
待ち合わせ場所で待ちぼうけをしている花怜からの電話だ。
慌てた八雲は透にスマートフォンを押し付ける。
花怜からの電話に出たいが、杏子を透と二人にするのも憚られたからだ。
透は八雲のスマートフォンを受け取り、通話のため外へと出ていった。
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