第1章 追われる少女

6/12
前へ
/143ページ
次へ
部屋に八雲と杏子の二人になった。 不安そうな杏子だが、八雲は彼女に聞かなくてはならない。 「天宮さん、答えたくなかったら無理に答えなくて良いです。話すのが辛かったら首の動きで示してください」 そう前置きしてから本題を口にする。 「あなたを突き落とした男、追いかけてきたという男に心当たりがありますね?」 質問というよりは、確認といった方が近いのかもしれない。 その問いかけに震える杏子だが、きゅっと目を閉じると口を開いた。 「はい。たぶん、知り合いだと思います」 小さいが良く通る声で答えると、杏子は目を開く。 ポケットからスマートフォンを取りだし、写真のフォルダを開いた。 「実は私、友達とバンドを組んでいるんですけど……そのバンドを応援してくれている人で、そんな感じの方が」 写真には紙袋をかぶってギターを弾く少女と、お面をつけて歌っている少年が写っていた。 八雲はその特徴的な二人に見覚えがある。 「もしかして、『sweet holic(スイートホリック)』の?」 「えっ……はい、そうです」 八雲が思い出したバンド名を口にすると、杏子は肯定した。 思わずまじまじと見てしまってから、ゆっくりと視線をはずす。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

141人が本棚に入れています
本棚に追加