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第3章 夜想曲は誰が為
さとう音楽プロダクションの入ったビルを出た八雲は、大きくため息をついた。
その様子を花怜と杏子が見ている。
「面倒なことになりましたねぇ……事件だけならよかったのですが」
二人に聞こえないよう、小さく呟いた。
八雲が今頭を悩ませているのは、箱詰めバラバラ死体よりも警視庁の小柳刑事だった。
仕事のできる才女のようだが、八雲に対して思うところがあるようで睨んでくる。
その理由のひとつが、先程まで一緒にいた鳴神恵愛警部補だ。
恐らく、小柳は恵愛に好意を抱いているのだろう。
その恵愛が慕う八雲が気に入らないと言う私情が入っている。
「先生、タクシー来ましたよ!」
駅前のホテルまではさほど距離がないのだが、杏子が狙われている可能性も考慮してタクシーを使う。
そのタクシーも既に花怜が手配していた。
「どうぞ」
タクシーの女性運転手がドアを開ける。
八雲は助手席に、花怜たちは後部座席に乗り込んだ。
目的地は既に伝えてあるため、スムーズにホテルまでついた。
お礼を言って少しだけ多めにお金を渡すと、八雲たちはタクシーを降りた。
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