46人が本棚に入れています
本棚に追加
トイレの個室はどこも狭い。
体育館横のトイレと違うのは、幾分床が綺麗なことと、タンク上の壁に不自然なフックが設置されていることぐらいだろう。白坂はそのどちらにも気に留めることことなく、己のベルトを緩めた。
昼間と同じようにワイシャツ一枚の姿になった彼はどこか気まずそうにシャツの裾で前を隠して、奏太の前に立った。先ほど、あられもない姿を見せたばかりだというのに、今更そんなことで恥ずかしそうにされても、対応に困る。奏太は無機質な硬い声で彼に指示を出した。
「こっちに向かって尻を出して」
「……ッ」
狭い空間では、白坂が尻をこちらに突き出すには、洋式の便器をまたぐしかなかった。彼は戸惑いながら、奏太に向かって何もつけていない白い双峰を突き出した。
「もっと」
容赦無い声で奏太が鋭く言うと、彼はタンクに手をついて、腰を逸らすようにして足を広げた。差し出された尻肉を片手で揉むと、蕾からヌチ……と粘っこい音が聞こえた。奏太は濡れた蕾を見て満足そうに頰を緩める。
「ちゃんと仕込んできてるじゃん。どこでしたの?」
「……職員用のトイレで」
「抜いてないよね?」
「そんな暇ねぇよ……ッ、ん……ッ」
指を中に入れると、白坂はびくりと肩を揺らした。掻き出すように指を動かすと中に仕込んだジェルが溢れて白い内腿に垂れていく。少し指を挿れただけなのに、白坂の後孔は物欲しそうに口を開いている。
垂れた蜜で指を濡らすと、三本の指を突き立てるようにして中にねじ込んだ。その衝撃に白坂は悲鳴のような声をあげた。
「あぁッ、やぁ……」
「本当に? こんだけ解してなにも感じなかったの」
一気に三本も挿れたのに、白坂は痛がる様子も見せずいとも簡単に快感の波に溺れてしまう。堪えきれない声が結んだ唇からこぼれていく。
「……ふ……ッ……あ、ヤ……ッ」
「ねえ」
「も……、焦らすなよ……、時間ないから……」
肩越しに振り返った白坂の目は涙ぐんでいた。昼間に煽ったこともあって、余裕がないのだろう。しかし、彼の一言は奏太を興ざめさせるには十分であった。
「お前っていつもそればっかりだよな」
ため息交じりにそう言うと、奏太はベルトを緩めて己の陰茎を扱いた。白坂がその様子を見て、その瞳が期待と不安に淫らに揺れている。彼はワイシャツの胸ポケットから未開封のコンドームを出して、奏太に差し出した。
「これ、使ってくれ」
「あんたって、いつもゴム持ち歩いてんの?」
奏太が揶揄うと、白坂は強く否定するように首を横に振った。奏太は出された袋を取ると慣れた手つきで封を切って自身に備え付ける。細い腰を持って、先端を充てがうと、さらに追い詰めるように意地悪に唇が歪む。
「俺にこうされるの期待して?」
「ちが……:--アァッ」
さらに否定しようとする白坂に、奏太は強引に貫いた。体勢のせいか、あれほど解したのに奏太自身を半分ほどまでしか飲み込まなかった。ギリギリまで引き抜いて、深く潜り込もうと腰を打ち付ける。引き抜こうとすると、吸い付くように絡みついてきて、奏太は快感に息を飲んだ。白坂も細く嬌声をあげて、垂れたジェルで汚れた足に鳥肌を立てている。
「……ひっ……んん……」
「何のために持ち歩いてんの? 俺以外の奴にも掘らせるため?」
責める口実に適当なことを言ったつもりだったが、口にした途端、なんだか腹が立って、乱暴に陰茎をねじ込んだ。ひぃと小さな悲鳴と、陶器のタンクが弾みで派手な音を立てる。白坂はそれを気にするように、タンクの奥の壁に手をつこうと伸ばしている。しかし彼の体を引き寄せると、下から突き上げるように抽送する。擦り合う粘っこい水音と、肌がぶつかる乾いた音、そして堪えきれない彼の声がトイレに反響する。白坂は自分の体が崩れないよう左右の壁を両方の手のひらで押してなんとか耐えていた。
「そ……た……、待って……、速い……、うぐ……、あぁっ」
「声、出しすぎ」
「んん……ッ、んふぅ……ッ」
奏太に指摘され、片手で自らの口を塞いだが、甲高い喘ぎがくぐもった喘ぎに変わっただけだ。それでも彼は首まで真っ赤にして耐えている。
「あんた……いつも何考えてんの?」
腰を振りながら、奏太は日頃の疑問を口にした。体は快感に煽られて興奮しているのに、頭の中心はどこか冷え切っていた。
白坂は嬌声を上げるばかりで答えない。
「何考えながら、ここ解したの?」
入念に準備された白坂の体はまるで奏太を待ちわびたように歓迎し、奥から締め付ける。その動きに理性が飛びそうになるのをなんとか堪える。その時、奏太の脳裏に冷めた考えがよぎった。白坂は自分に興奮しているわけではない。彼は誰が相手でも歓迎する。この男はそういう男だ、と。
最初のコメントを投稿しよう!