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奏太は床を蹴って椅子の底のキャスターの転がすと、白坂の隣に移動した。そしてスマホを二人で鑑賞する。
「はは、これなんて自分からゴム渡してる」
ちょうど白坂が後ろ手でコンドームを渡すところだった。
そりゃそうだ。この直前に、奏太にゴムを持って来ないと生ですると脅したのだから。しかし、音声の入っていない映像で見ると、まるで白坂が自主的に行為に及んでいるように見える。
「すげぇ気持ち良さそうな顔してる……」
映像が挿入までくると、もう限界だと言わんばかりに白坂はスマホを伏せた。同時に俯く彼に奏太はさらに追い討ちをかけた。
「ま、あんたの言う通り、レイプで訴えるのは無理そうだ。だけど、これがSNSに流れたら困るのは誰かな」
「……」
「勤務中の教師が、学校のトイレで生徒と不適切な行為。ネットニュースなんかこういうの大好きだろ?」
「……お前……どこまでクズなんだ……」
白坂が奏太に向けたのは軽蔑の眼差しだった。しかし彼が何を言おうが、負け犬の遠吠えにしか聞こえない。彼の声は怒りに震えていた。
「こんなことして、一体なんになるんだよ……」
奏太はその質問に答える気などなかった。何を言ったって反論の余地を与えるだけだ。
「なあ、シラマ。俺さ、一回ナマでやってみたい」
唐突な提案に白坂は呆然とこちらを見ている。その顔ににんまりと笑みを浮かべて首を傾げた。
「……なあ、聞いてる?」
少しの沈黙があった。ここにきても彼の中に葛藤があるのだろう。しかしどれだけ葛藤したところで、出る答えは一つだけだ。白坂は勝負に負けたのだから。彼はやがて諦めたように口を開いた。
「わかった。じゃあ今夜ホテルに……」
彼が項垂れ、白旗をあげる姿を見て、奏太は言いようのない満足感が心に満ちていくのを感じた。胸が高鳴って、興奮する。
今すぐ、彼を押し倒したい気持ちを抑え、冷静な声を装う。
「何時?」
「六時には終わると思う。場所は……、前と同じホテルで」
それを聞いて奏太の顔が少し曇った。部屋で一人泣いた苦い記憶が新しい。しかし、それを口に出すのはプライドが許さず、奏太は頷いた。
「わかった。じゃあ、俺、先に行って待ってるから。連絡はアプリ通して」
その後、いくつか事務的なことを話し合ったあと、奏太は準備室を出た。扉を閉めた瞬間、奏太は拳を握りしめて小さくガッツポーズをした。
作戦がこんなにうまくいくとは思わなかった。
奏太は興奮状態で大股で歩き出す。
中出ししたいなんてとっさに言ったけど、彼があんなに狼狽し嫌がり、そして受け入れるなんて思ってもなかった。
ホテルでどんな命令をしてやろうかと考えると心が踊る。スキップしたくなるような軽い足取りで自分の教室へと戻っていったのだった。
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