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ネームプレートには苗字しか書いてないのに、 下の名前まで呼ばれたら『なんで知ってんのっ?』てなっちゃうよね。
「びっくりした…まじ…なんで俺の名前知ってるんすか??」
「あたし、ここの常連だし!新人リサーチしといたんだ!」
「新人…リサーチ…??」
「このお店の新人さんには、不審な女と思われがちだから、あたし」
「は、はぁ…とりあえず、コーヒー追加で」
そう言った彼は、逃げるようにテーブルを後にする。
うん…逃げたくもなるか…
お店の新人さんのフルネームを当てて、驚いてもらうのが趣味とか、確かに、不審だよね…
そんなことしか楽しみないとか、正直、あたしの人生、干からびてるんじゃないかとも思う。
付き合ったことあるのは、今の彼氏だけとか…そう言うのも、ちょっと痛いかなぁ…?
私は、なんとなくため息がでた。
ふと、カウンターを見ると、赤い髪の彼がコーヒーを淹れてくれながら、先輩バイトのミキちゃんと楽しそうに話てる。
「……若いって…いいなぁ…」
そんなことを思わず呟いて、あたしはもう一度、ため息をついた。
ふと、窓の外を見ると、インディゴに煙る夕暮れの空がそこにあった。
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