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車を運転して、お店の前までたどり着いた時、裏口には、どしゃ降りの雨に途方にくれた、うちの彼氏と、そして、バイトの子が二人いた。
「あれ……?赤い髪の子…?菅谷くんだ!今日は遅番だったんだね…」
もう一人のバイトさんはミキちゃんだ。
あの子、きっと、菅谷くんのこと気に入ってるよね…
私はそんなことを思いつつ、裏口の前に車を停めると、助手席の窓を開けた。
「濡れちゃうよ!みんな乗りなよ!」
「あれ!里佳子?迎えにきてくれたんだ」
私はこの時、バイトさん達を車の前まで送るつもりだったんだけど…
*
30分後、信ちゃんの「腹減った、おまえら奢るから、飯食いいこう」の一言で、私達はチェーン店の居酒屋にきてた。
いい気になって飲むから、信ちゃんはもうグデグデになってる、もう、いい加減にしてよ…ってほんとに思う。
「だから居酒屋は嫌だって言ったのに…すぐ寝落ちちゃうんだもん!一人で歩いて部屋行ってよね!」
なんかイラっとして強い口調になってしまう、だけど信ちゃんは、まるで聞いてない。
「わぁかってりゅぅぅぅ、わぁかってりゅぅぅぅ」
絶対わかってないし!
そう思って、更にムッとした瞬間、向かいに座ってた菅谷くんと目があった。
だけど彼は、ぱっと私から目を逸らす。
ほんと猫みたいな子だなぁ…この子…
愛想は悪くないのに、実は人が嫌いなのかも…
そう思っても、なんだかふわふわ揺れる赤い髪が可愛く見えて、私は思わず笑った。
こんな見た目でも男の子だし、信ちゃん運んでって言ったら、運んでくれるかな?
「ねぇねぇ、菅谷くん、帰りこいつを部屋まで連れていってもらっていい?」
私が、一か八かそう聞いてみると、菅谷くんは一瞬驚いた顔をして私を見る。
その反応が面白くて、私はつい追い討ちをかけた。
「あたし一人じゃ、この人引きずっていけないもん…ダメかな?」
「…いや…ダメじゃないっす…」
内心、やったぁと思ってしまった私。
「わーい!」
「………」
私は、なんだか意味不明に嬉しくて、困ったように烏龍茶を飲んでる菅谷くんを、変な笑い方をして見つめてしまった。
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