【1、窓際】

1/4
前へ
/72ページ
次へ

【1、窓際】

386bd5b6-d805-461d-899d-2c1338bcf82b   *   私には、大学時代から、10年も付き合っている人がいる。  私の彼氏は、このチェーン店のイタリアンレストランの店長だけど…  別に私は、彼に会いたくてここにいるんじゃない。  彼が店長になる前から、私はここの常連だから…  いつもの窓際の席に座って、なんとなく、外を見る。  私の生活は、ある意味でとても安定してて、ちゃんとした仕事があって、ちゃんとした仕事を持っている彼氏がいて、 周りから見たら、とても充実しているのかもしれない。  だけどそれは、ある意味で変わり映えのしない、退屈な日々。  なんとなく、ため息が出る。  タブレットで見るネットニュースも、そんなに面白いものがある訳じゃないし、家に帰るのもなんとなくつまらない、 だから気が向くとこのお店でコーヒーを飲んで時間を潰す。  私の毎日は、だいたいそんな感じの、つまらない毎日。  このまま、結婚して、子供を産んで、老け込んでいくのかな…?  あたし…?  そう思いながら、あまり人がいない店内を見回してみる。 一際目立つ、赤い髪をしたアルバイトさんが、 ちょうどポーションミルクの補充をしているところ。  彼は、まだこのお店に入って間もなくて、なんとなく雰囲気の変わった子だったから、すぐに名前、覚えちゃった…  髪は赤いし、見た目は、男なんだか女なんだかわからないような男の子だし、それじゃくても目立つよね…  音楽やってる子だって、信ちゃん情報。  まだ若いし、きっと私とは、全然違う世界を見てる人なんだろうな。  私は、一度彼から視線を外してコーヒーを飲む、そして、また彼の方をみた時、偶然なのか必然なのか、彼と目があった。 「……。」 「あ……」  彼が一瞬、困ったような顔をしたから、私は、可笑しくなって思わず笑ってしまった。 「菅谷(すがや)くん」  バツが悪そうにしている彼を呼ぶと、 彼は不審そうな顔をして私を見る。 「っ…あ、はい」  彼にしてみたら私なんて、不審なおばさんって感じなんだろうな~  そう思ったら私は、またなんだか可笑しくなってしまった。  彼は、私の座るテーブルの脇に立った。 「コーヒー、お代わりください」 「かしこまりま…」 「菅谷 樹(すがや いつき)くん」 「えっ?」  まるで、見ていけないものを見てしまったかのような表情をして、彼は私をまじまじと見る。  本当に幽霊でも見たみたいな#表情__かお__#だったから、 私は可笑しくなってまた笑った 「そんな顔しなくてもいいじゃない!驚いた?フルネーム知ってて?」  驚いて当然だよね。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加