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【1、窓際】
*
私には、大学時代から、10年も付き合っている人がいる。
私の彼氏は、このチェーン店のイタリアンレストランの店長だけど…
別に私は、彼に会いたくてここにいるんじゃない。
彼が店長になる前から、私はここの常連だから…
いつもの窓際の席に座って、なんとなく、外を見る。
私の生活は、ある意味でとても安定してて、ちゃんとした仕事があって、ちゃんとした仕事を持っている彼氏がいて、
周りから見たら、とても充実しているのかもしれない。
だけどそれは、ある意味で変わり映えのしない、退屈な日々。
なんとなく、ため息が出る。
タブレットで見るネットニュースも、そんなに面白いものがある訳じゃないし、家に帰るのもなんとなくつまらない、
だから気が向くとこのお店でコーヒーを飲んで時間を潰す。
私の毎日は、だいたいそんな感じの、つまらない毎日。
このまま、結婚して、子供を産んで、老け込んでいくのかな…?
あたし…?
そう思いながら、あまり人がいない店内を見回してみる。
一際目立つ、赤い髪をしたアルバイトさんが、 ちょうどポーションミルクの補充をしているところ。
彼は、まだこのお店に入って間もなくて、なんとなく雰囲気の変わった子だったから、すぐに名前、覚えちゃった…
髪は赤いし、見た目は、男なんだか女なんだかわからないような男の子だし、それじゃくても目立つよね…
音楽やってる子だって、信ちゃん情報。
まだ若いし、きっと私とは、全然違う世界を見てる人なんだろうな。
私は、一度彼から視線を外してコーヒーを飲む、そして、また彼の方をみた時、偶然なのか必然なのか、彼と目があった。
「……。」
「あ……」
彼が一瞬、困ったような顔をしたから、私は、可笑しくなって思わず笑ってしまった。
「菅谷(すがや)くん」
バツが悪そうにしている彼を呼ぶと、 彼は不審そうな顔をして私を見る。
「っ…あ、はい」
彼にしてみたら私なんて、不審なおばさんって感じなんだろうな~
そう思ったら私は、またなんだか可笑しくなってしまった。
彼は、私の座るテーブルの脇に立った。
「コーヒー、お代わりください」
「かしこまりま…」
「菅谷 樹(すがや いつき)くん」
「えっ?」
まるで、見ていけないものを見てしまったかのような表情をして、彼は私をまじまじと見る。
本当に幽霊でも見たみたいな#表情__かお__#だったから、 私は可笑しくなってまた笑った
「そんな顔しなくてもいいじゃない!驚いた?フルネーム知ってて?」
驚いて当然だよね。
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