0.プロローグ

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43a622f4-9600-4a05-bc54-e78acdf907c5  渋々下に降りて行くと母ちゃんから夕飯の買い物を頼まれた。 「あーっ…寒っ!」 外に出ると外界は冬。両手を擦り付ける。 沖縄だから本土や北海道のような     寒さではないにしても、   元来、暑がりで寒がりのアタシには無理。 どっちかというと暑い方がまだマシ。        今夜も鍋か… 母親は福岡出身だから    とにかく冬になると水炊きが多くなる。 家は北谷(ちゃたん)町のアメリカ村から程近い。だから買い物はほとんどそこで済ます。 アメリカ村に入ったところにある     カフェ兼バー『シマンチュ』で     寝起きのビールをあおる。 余りに露骨なネーミングセンスに       最初は戸惑った。     この店は二つ歳下の悪友、     吉澤萌がオーナーの店。 ーーいらっし…なんだセリか。 「ご挨拶ですこと」 「またビール?」 「うん」 辺りを見回すと今日は意外と客が多い。       アタシ以外に3組。   しかも当て付けかのように全部カップル。
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