プロローグ

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 馬鹿みたい、と私は小さく呟いた。  文芸部室に届く感想用紙には、必ずと言って良い程『LiaR』の4文字が羅列されているのだから。  綴られているのは、どれも変わらず『LiaR』を賞賛する声ばかり。作品の意図を汲み取ろうともせず、ただ上辺だけの解釈で自己の欲求を満たそうとする。  ...何もかもが、所詮は自己満足だ。小説を書くのも読むのも、ただ己の欲求に添えれば良いのだから。  ふと、自嘲するように息を吐く。  ああ、私は何をしているんだろう。  自分の想いをひた隠して、醜い願望を読者に押し付けて。  どうせ誰も見ないからって、本当の自分を押し殺して。  ...その癖、誰かに助けてほしいなんて思ってたりもして。  でも、そんな事どうだって良い。  私は『LiaR』。  全てを偽って、嘘を吐き続ける人間。
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