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「あっ、あっ、あっ」 部屋の中に、一希の声と、肌がぶつかる音と、名城の荒い息遣いだけが響き続けている。 「あっ、イク…っ」 「まだまだ」 「や、も、やめんなよ…っ」 今日は今まで以上に濃密なセックスとなっている。 挿入してから一時間以上経っているのに、まだ一度もいかせてもらえてないのだ。 いきそうになると動きを止められてしまい、一希はもう限界に近い。 一希の先端から落ちる液体は腹から零れてベッドを濡らし、名城が動きを止めていても、一希は勝手に動く自分の腰を止められない。 しかしそれだけでは達することはできず、涙目で誘うように見つめるしかない一希を、名城は獣のような目で見つめるだけだ。 名城自身はまだ一度も射精していない。その性器は一希の中で、今までで一番大きく膨れ上がり、いやらしく変えられてしまった粘膜を虐めるように可愛がるのだ。 「お前、そんなエロい目で甘えたら逆効果だぞ。もっと虐められたいのか?」 「ば、バカ…っ、早く、動けよっ」 「自分で動いてるだろ。そんな大股開いて腰振って」 なかなか動いてくれない名城は、セックスの時にも言葉遣いが乱暴な一希に、可愛い甘え言葉を言わせたいらしい。 「も…っ、さっさといかせてくれよっ」 普段だったら「いかせろよ」と命令口調になる一希には精一杯の懇願なのに、名城は納得してくれない。 「う、くそ…っ」 「え、ウソだろ」 悔しさのあまり、涙が零れた。一度だけ気持ちよすぎて泣き出してしまったことはあったが、悔しくて泣くのは初めてだ。 さすがに名城も驚いていたが、だからこそ、動けずにいる。 もう頭に血が上り切ったのか、何も考えられなくなり、一希は何もかもがどうでもよくなる。 「う、も、名城さんのバカ…」 そんな風に悪態をつきながらも腕を伸ばすと、名城は戸惑った表情で一希の身体を抱きしめてきた。 「も、早く動いて。中擦って。ぐちゅぐちゅして…」 いつかAVで聞いたようなセリフを口にすると、開放感でスカッとした。 名城は余程驚いたのか、背中が固まっている。一希を抱きしめたままの耳元で、小さく囁く。 「早く、中、名城さんので犯して…あっ」 いきなり奥深くをズンッと突かれ、一希は息を飲んだ。 「はっ、は、すげえな、一希。どんだけ夢中にさせる気だよ」 「あっ、あっ、すご、おっきいっ」 「てめえのせいだろ。耳元で可愛い声出しやがって」 「な、名城さ、だって、エッチな声…」 「エッチな声?」 わざと耳元で喋られて、息遣いがリアルに響く。 「や、そこでハアハア言わないでっ」 「人を変態みたいに言うな。お前がもっと気合い入れて腰触れって言ったんだろ」 「変態じゃんっ、エロいし…っ、あっ、あっ」 「エロいのはお前だっつーの。俺ので犯されたいんだろ?」 「あっ、や、や、も、だめ」 「ダメじゃねえよ。ほら、ぐちゅぐちゅいわせてほしかったんだろ?」 わざとストロークを大きくして音を響かせる名城を睨みたいのに、もうとろけきった身体は顔にさえ力が入らない。 「は、あ、も、イク、イク…ッ」 いつも以上の快楽に、一希の指先に力が入る。 「はっ、は…っ、中に出すぞ…っ」 「出して、あついの、中に…っ」 宣言通り、中に熱い飛沫が叩きつけられる。同時に一希のペニスからも大量の精液が放たれた。 「は、あ、溢れる…」 一希の中から零れた精液がベッドを汚す。そんな事には構わず、引き抜かれたペニスはまだ勃ち上がったままだ。 「一希」 手を引かれて起き上がり、促されるまま名城の膝に抱き上げられると、開いた足の間から、注がれた粘液が漏れ出る。 「いやらしいのが漏れてるな」 「名城さんのせいだろ」 「一希がエロいせいだって」 「なんでも俺のせいにしやがって…」 名城は額に汗を浮かべてはいるが、もう余裕の表情で次の挿入の準備をしている。対する一希は、悪態をつきながらも、早く目の前の男に抱き付いてキスしたいという欲求を感じている。そんな一希の穴を、下から逞しいペニスの先がくすぐってくる。 「ん…」 これ以上、腰を落とせないように、名城の腕がしっかりと一希の身体に巻き付いている。 また焦らすのかと、睨み付けた。 「入れないのか…あっ」 文句を言おうとしたところで一気に貫かれた。 「ん、気持ちい…」 「一希」 名前を呼ばれ、見つめ合いながら顔を寄せる。 そっと触れた唇が吸われ、舌が潜り込んできた。優しく絡み合うキスがどんどん淫らなものに変化していく。 今日のセックスは、甘えているような甘えられているような不思議な感覚だ。 しかしどちらも嫌ではない。 唇を離して見つめ合うと、またこの男が可愛く見えた。 愛しい、という言葉が脳裏に浮かんだ。ストンと納得できた。 ただ居心地がよかっただけの男の傷に触れ、寄り添いたいと思ってしまった。 そっと親指で頬を撫でると、名城は笑って掌に唇を押し付けた。ドキドキする。自分が男相手にこんな風になるなんて。しかも名城は優しいが、決して一筋縄ではいかない男だろう。それでも、こうなったらもう仕方ない。 一希は戸惑いながらも、新しい自分を受け入れることにしたのだった。
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