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微かに、細く弱くだが、
結婚して四年、俺たち夫婦の毎年恒例の行事になっている七月のキャンプは、一年に一度切りだったが、七夕の日にではなかった。
本格的な夏休みに入る前の海の日の連休のいずれかに、一泊二日で催されるがお約束だった。
参加者の顔ぶれは年ごとによって多少の違いはあったが、主催者故に、町山一彦の姿は必ず在った。
町山君(と俺は呼んでいた)は、妻の学生時代の部活の後輩だった。
キャンプの参加者たちは皆、妻が所属していた美術部の部員たちか、その家族だった。
妻が披露宴の二次会に部活の仲間たちを招待し、その時、町山君が同学年の皆で毎年キャンプをしていると話してくれたのが、そもそものきっかけだった。
そういう席でのお誘いは大抵、社交辞令と言おうか義理なので、俺はすっかりと忘れていた。
しかし、町山君は妻へとわざわざ連絡をしてきた。
――そう、律義にも。
キャンプと言っても、張るのはタープテントだけで、寝泊まりにはバンガローを利用するお手軽なものだった。
翌日は、キャンプ場に隣接している立ち寄り温泉で、すぐさま汗や汚れを洗い流せるのもありがたかった。
タープテントを組み立て、炭火を起こしながら、真っ昼から屋外で飲むビールの味は格別だった。
散々飲んだ翌日の朝食の、汁物とスイカとの組み合わせも、疲れた胃に染み渡る旨さだった。
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