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今夜は本社の社員だけでも頭に入れておこうと、新は組織図に沿ってページを繰り始めた。
総務部、経理部、情報システム部と管理部門をチェックし、営業部へ移る。営業1課と2課に分かれているが、その区分が担当商品なのか担当エリアなのか分からなかった。明日直接聞こうと思いながらチェックを進める新の目に、見覚えのある文字列が飛び込んできた。
営業2課 斯波 翔
――……⁉ 斯波 翔⁉
思わず身を乗り出し、モニターにかじりつく。
――翔……お前なのか?
慌てて写真を確認する。そこには自分と同年代と思しき、硬い表情をした男の顔があった。だが、自分の記憶の中の斯波とは随分印象がかけ離れている気がする。
――同姓同名の別人か?
新の知っている斯波翔はどちらかというと愛嬌のある童顔だったが、写真の男は精悍な顔立ちをしている。
――でも目元のあたりに微かに面影があるような気もする。
確信が欲しくて経歴を目で追った。生年月日が新の記憶の中の数字とカチリと音を立てて一致し、新は詰めていた息を大きく吐き出した。
――まさか、こんなところでお前を見つけるとは……
「どうかしましたか?」
どうやら声に出ていたらしい。傍らで手紙や文書のチェックをしていた高杉が顔を上げてこちらを見た。
「いや……社員の中に知り合いを見つけたんだ」
書類の束を手に高杉が近づいてきて、パソコンのモニターを覗き込んだ。
「京都大学工学部卒。社長と同い年ですね、海聖時代の同級生ですか?」
「ああ。まあ高校の途中で突然いなくなったけどな」
「いなくなった?」
「事件を起こして退学になったんだ。それっきり、誰も奴と連絡が取れなくなった」
「へえ」
「心配して何度も家まで行ったのに一度も会わせてもらえなかった。そのうち、もうここにはいないから来ないでくれって言われてな。そんな消え方だったからずっと気になっていたんだ」
「家まで行くほど、社長はこの人と親しかったんですか?」
「ああ、親友だった。少なくとも俺はそう思っていた」
――そうだよな? 俺とお前は親友で……そして、それ以上だった。翔、お前もそう思ってくれていただろ?
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