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グラウンドの脇の道を志山と一定の距離を置き歩く。 「篠崎!お前いつになったら戻るんだー?」 「すいませーん!そのうち!」 野球部の先輩から声がかかり、ヘラっと笑い頭を下げた。すると組んでいたキャッチャーの寅威(とらい)が走り寄ってきた。 「公亮!」 「わり、今急いでるから」 篠崎は顔を見もせず足を早めた。 前を見ると志山が少し振り返った様に見えたが気のせいかと思うほど一瞬だった。 「あっつ…」 刺すような陽射しで一気に噴き出した汗が額や背中を流れ始め、カバンからタオルを出し頭に巻き顔を上げると、志山の襟元の髪もしっとり濡れていて白い肌に張り付いていた。 この気温にあの異常な程の厚着。 絶対つらいはずなのに… 30分は歩いただろうか、志山の足が止まると振り返り、首を横に振った。 ついてくるなってことか。 え…ていうか俺ストーカーかよ!? 自分がやっている事が情けなくなり大人しく背を向け溜息をついた。 「俺何やってんだ」 志山は角を曲がり家に入ると急いで玄関で着替え、小走りに2階の自室に入った。そっと窓のカーテンの隙間から篠崎の方向を見ると背を向け元来た道を戻っていく所で、素手を窓にあて、ただその姿が消えるまでじっと見つめていた。 それから篠崎は毎日のように図書室へ通い、そのうち志山も篠崎が目の前に座って話しかけてきてももう帰ることもせず、ただ本を読んでいるという日々が続いた。 「その手袋どこに売ってんの?」 「昨日のドラマ見た?」 しかし、どんな質問攻めにも応えることもなく、視線すら交わることもなかった。 話の合間、篠崎は頬杖をついて外の野球部の練習を眺めた。今日は練習試合のようで2年のピッチャーが投げている。 「ヘタクソ」 そう呟きチラリと志山に視線を戻すとパッと睫毛が下がった。 まただ… 志山の視線をたまに感じていたが、未だ目が合う事はない。 その繰り返しに少し苛立ちを感じていた。
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