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舟村大使だけが、何故かまだ室内に残っていた。必死の形相で、駆け寄ってくる。
「ジョークですよ、舟村大使」
「心臓止まるかと思いましたよ」
「燃えないゴミの日に中身分からないよう、新聞紙で包んで捨てます」
「――厚かましいのですが、私に個人的に売っていただけないでしょうか?」
「折角のお申し出ですが、絶対に捨てます!」
舟村大使が溜息をしながら、背を丸くして玄関を後にした。
燃えないゴミの日に、ゴミ出しを終わってから、一旦、家に帰った。社用車に乗り込み、車を走らせる。燃えないゴミの収集場所に、舟村大使が背中を向けて立っていた。
あいさつをしようとしたが、私の捨てた燃えないゴミの袋を、手にしているので、声をかけなかった。
邪馬台国の様子は、繰り返しテレビ放映された。世界中で“家明け渡さなかった男、中川”“世界遺産に住んでいる人、中川”として有名人になった。
しょっちゅう、どこかの国のテレビ局から、取材の申し込みがある。会社で仕事をしている光景を映すのが、取材を受ける絶対条件だ。(完)
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