UFOが自宅にやってきたので、僕は日本庶民代表として外国の偉い人に会う羽目になった。

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 驚いたり、笑い転げる同僚に事情を説明した。パッと皆が真顔になる。同僚たちもUFOのニュースは知っていたが、僕の家の上空とは思いもしなかったのだ。 上司からお金を借りて、同僚が服を買いに走ってくれた。  会社で二泊した。同僚や先輩が印刷機を使って、会社名が入ったパネル作りで、残業して作っている。  適当な用事をでっち上げ、自宅に帰れないので、面倒だが手伝った。 「中川君目当てで、マスコミが会社に集まってるから、記者会見の準備したよ」 「え? 私が記者会見するんですか?」  先輩から借りたスーツに着替える。臨時の記者会見場となった広い会議室に入る。  広報課長が、胸に新品の社員証をつけてくれた。通常の社員証と違い、会社名が大きく描かれている。  マスコミ関係の方々が百人はいる。三脚に置かれたテレビカメラは、十台を余裕で越す。  海外のメディアの方もいた。フラッシがまぶしい。もし、テレビを見ている側なら、「フラッシュの点滅にお気をつけください」を、字幕表示されるだろう。  緊張しながら、記者団の前で、社長と一緒に一礼した。並んで折りたたみ椅子に座る。広報課長が、結婚式の披露宴のように、記者会見場の片隅で、立ってマイクで話している。 「お忙しいなか、報道関係の方々にお集まりくださり、ありがとうございます。今回、自宅上空にUFOが静止している。弊社、ナガツネ産業、第二営業部の中川をご紹介します」  カメラの威圧感に心が負けそうだ。少しだけ腰を浮かせ、また一礼していた。
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