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「社長、いつもは、軽で営業回ってますが?」
「今日から、中川君の営業車はこれだよ。自宅から直行直帰をして欲しいね」
「通勤は電車で……」
広報課長から、意味を理解しろと目配せされた。新たな営業車は、自宅前の駐車場に停車することになった。
「非民主的な国の指導者とも会うので、私が日本庶民を代表して、あなたを嫌いな理由は、民主的に選ばれたリーダーじゃない。国の代表に選んだのは誰かって言ってやりますよ」
「やめなさい! 大人になれってくれよ。中川君は、わがナガツネ産業の社員なんだよ。ナガツネ産業は世界中に輸出している。会社として、政治には中立の立場を通す」
社長が必死の形相なので、引き下がった。
世界を代表して国連の事務総長が、日本を代表して総理大臣が、漢文や複数の言語で返事を書き、UFOから落されたカプセルに収め直し、自衛隊員がマジックハンドみたいなのを使う。返事の手紙を自宅の屋根に置いた。
UFOからレーザー光線のようなモノが伸び、ふわふわとUFOに格納され、お礼らしき言葉を大音量で告げ、垂直に急上昇し青空の彼方に消えて行った。
失礼ながら国名を存じ上げない国の大統領とも会談した。会社の名前が入った名刺交換しまくりだ。
保険会社に壊れた屋根の補修費用が出るのか電話しようとしてる僕に、市長さんが今度は、政府の長い肩書の人まで連れてやって来た。長い肩書の人が、にこやかに話す。
「家と土地は人類にとっての遺産であり、政府としては、どうしても売っていただきたいのです」
引っ越しが面倒くさいと断ったが、値上げ交渉と勘違いされてしまったらしく、提示される金額がどんどん増加されていく。
「絶対に立ち退きません」
「世界遺産として登録したいのです」
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