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相場の十倍の金額を示してくれた時、心が揺れた。亡き両親が残してくれた家だ。土地は江戸時代から、先祖代々守ってきたのだ。絶対に売らない。否、売れない。
社長からも売るように説得されたが、丁重に事情を説明した。社長が一番の理解者だった。
近所の家は数件立ち退きに応じたようだ。少し離れた場所に、邪馬台国の所在地兼・地球外知的生命体と初めて接触した場所として、急ピッチで記念公園が造成され、僕の家は世界遺産に登録された。
世界遺産は世界中にあるが、世界遺産に住んでいる人は珍しいだろう。
しばらくして、政府がカプセルの中にあった原理不明な、映像が自動で繰り返し再生される機械の映像の一部分だけを公開した。
オペラート三号星のUFOが約千八百年前に撮影した邪馬台国の様子は、音声まで含めて精緻な映像として再生され続けており、記念公園内の施設限定で、全編を毎日上映するそうだ。
観光客が世界中から訪れた。騒々しいのが苦手な僕は、完全防音工事をした。政府最初、世界遺産だから手続きがと、うるさいかった。
しかし、工事認めないなら、ほかの場所に家を移築して建設するぞ! 解体業者さんにお願いして壊すぞ! と一喝したら、認められた。
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