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「大好きだよ、お姉ちゃん」
「ええ。私も愛してるわ。清花」
両腕で愛する妹を……いや、愛する娘を抱き締めて、胸の奥から湧いてくるやるせなさを必死に抑え込む。
清花が私をお母さんではなく、お姉ちゃんと呼ぶようになって一ヶ月が経とうとしていた。
そうなった原因を直視することは……母親として辛い、などという生ぬるい言葉では到底足りない。
それは清花も同じで、現実から目を逸らし過ぎて、何もかもが狂っていた。
「お姉ちゃん……」
お姉ちゃん。彩葉が発するその言葉には、家族に向けるのに相応しくない熱が込められている。
「お姉ちゃん……お姉ちゃんっ……」
清花は左腕を私の首に回し、顔を近付け唇を重ねてくる。娘にお姉ちゃんと呼ばれながら、恋人同士のように……いやまさに恋人同士として唇を重ねる。
そうすることに最初は嫌悪感を案じていたはずなのに。毎日のように繰り返している間に、そうした感情は鳴りを潜めた。
代わりに湧いて来たのは、もうこの世にはいない……妹を恋人として愛していた娘、朱雀の思念だった。
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