第一章 三人の落ちこぼれ

13/19
前へ
/19ページ
次へ
 僕とロイはリリアンを連れてユリウスの元へと戻る。 「ユリウス、お待たせ」 「ちょっと待って。今、ダン・フォードが処刑されそうな所だから」 「処刑されるの!?」  僕は驚きのあまり、大声を上げてしまう。 「全員が読み終わるまでネタバレは無しだって言ったろ!」  ロイも批難の声を上げる。 「まだ処刑されるとは言ってないんだから、正確にはネタバレじゃないよ。もし本屋にこう書いてあったら君はネタバレだって怒るのか? 『ダン・フォードが処刑されるかも』」  ユリウスは小説のページを捲りながら言う。  ダン・フォードとは今僕達が読んでる小説、『星間戦争』の登場人物だ。 「取り敢えず、『ツマらないキャッチコピーだ』って文句言うね」とロイ。  そんな正論は良いからもっと怒れよ! 「……確かに。『星間戦争』の作者に謝るべきレベルだ」  それは君が付けたキャッチコピーだから君が謝れ。  そこでやっとユリウスは読んでいた小説から顔を上げる。  そしてリリアンの姿に驚いた。 「本当にスカウトして来たんだ! 『星の導きあれ』だね」  ユリウスが僕に頼んだじゃないか! この反応、どうせ上手く行くはずないと思ってたんだろう。  僕も思ってた。 「星の……何?」  リリアンは僕に聞く。 「気にしないで。小説の話し」  『星の導きあれ』は『星間戦争』で良く出るセリフ。だから知らなくて当然だ。  だがユリウスは訝しげな視線をリリアンに向ける。 「『星間戦争』読んでないの? この子、大丈夫?」  ユリウスは僕に言う。  ユリウスはすぐに物事を自分中心に考える。むしろ僕達の様に小説にドハマリしてるほうが少数派だ。  だって街の外には本物の冒険が溢れてるんだから。 「もう女の子なら誰でも歓迎!」  ロイが嬉しそうに言う。 「小説読んでなくても、女の子じゃ無くても歓迎だよ」  僕はそう言ってから自分の発言が心配になった。 「勿論、君が女の子ぽく無いって話じゃないからね」  僕がそう付け加えると、リリアンは微笑んだ。 「ママには『もっと女の子らしく』って言われるわ」 「君は充分、魅力的なハニーさ。……ハニーって呼んでも良い?」  ロイの軽口にリリアンは呆れ顔だが、余裕を感じる。  早くもロイには慣れ始めてる様だった。   「駄目だけど、ありがとう」 「それで、リリーのママも美人?」  リリアンの顔が一瞬で曇るのを見て、僕は笑いを噛み殺す。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加