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僕とロイはリリアンを連れてユリウスの元へと戻る。
「ユリウス、お待たせ」
「ちょっと待って。今、ダン・フォードが処刑されそうな所だから」
「処刑されるの!?」
僕は驚きのあまり、大声を上げてしまう。
「全員が読み終わるまでネタバレは無しだって言ったろ!」
ロイも批難の声を上げる。
「まだ処刑されるとは言ってないんだから、正確にはネタバレじゃないよ。もし本屋にこう書いてあったら君はネタバレだって怒るのか? 『ダン・フォードが処刑されるかも』」
ユリウスは小説のページを捲りながら言う。
ダン・フォードとは今僕達が読んでる小説、『星間戦争』の登場人物だ。
「取り敢えず、『ツマらないキャッチコピーだ』って文句言うね」とロイ。
そんな正論は良いからもっと怒れよ!
「……確かに。『星間戦争』の作者に謝るべきレベルだ」
それは君が付けたキャッチコピーだから君が謝れ。
そこでやっとユリウスは読んでいた小説から顔を上げる。
そしてリリアンの姿に驚いた。
「本当にスカウトして来たんだ! 『星の導きあれ』だね」
ユリウスが僕に頼んだじゃないか! この反応、どうせ上手く行くはずないと思ってたんだろう。
僕も思ってた。
「星の……何?」
リリアンは僕に聞く。
「気にしないで。小説の話し」
『星の導きあれ』は『星間戦争』で良く出るセリフ。だから知らなくて当然だ。
だがユリウスは訝しげな視線をリリアンに向ける。
「『星間戦争』読んでないの? この子、大丈夫?」
ユリウスは僕に言う。
ユリウスはすぐに物事を自分中心に考える。むしろ僕達の様に小説にドハマリしてるほうが少数派だ。
だって街の外には本物の冒険が溢れてるんだから。
「もう女の子なら誰でも歓迎!」
ロイが嬉しそうに言う。
「小説読んでなくても、女の子じゃ無くても歓迎だよ」
僕はそう言ってから自分の発言が心配になった。
「勿論、君が女の子ぽく無いって話じゃないからね」
僕がそう付け加えると、リリアンは微笑んだ。
「ママには『もっと女の子らしく』って言われるわ」
「君は充分、魅力的なハニーさ。……ハニーって呼んでも良い?」
ロイの軽口にリリアンは呆れ顔だが、余裕を感じる。
早くもロイには慣れ始めてる様だった。
「駄目だけど、ありがとう」
「それで、リリーのママも美人?」
リリアンの顔が一瞬で曇るのを見て、僕は笑いを噛み殺す。
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