第一章 三人の落ちこぼれ

16/19
前へ
/19ページ
次へ
 僕達が馬車に乗ってギルドに戻って来た時、太陽は沈みかけていた。 「もうっ! 最悪だよ!」  僕の後をユリウスがそう言いながらギルドの戸をくぐる。  もう何度目だろうか。馬車の中でもずっと言っている。 「だから悪かったって言ってるじゃないか!」  最初の内は笑えたんだけど……もう良い加減笑えない。 「見てよコレッ!」  ユリウスは僕に左耳を突出す。 「何にも変わらないって!」 「良いや、絶対コッチのモミアゲだけ1センチは短くなってる! それに……まだ耳も熱いよ! 君の魔法のせいだぞ!」  ユリウスは自分の耳を押さえて叫ぶ。 「でも突然ゴブリンが飛び出して来たんだからしょうがないだろ?」  僕等はゴブリンを追って洞窟に入った。そして途中、ユリウスに突然ゴブリンが飛びかかって来たのだ。  そこを僕は助けてあげたのだ。  もう一度言う。僕はユリウスを助けたのだ! 「ファイアの魔法じゃ無くても良かったハじゃない! アイスでもサンダーでも!」 「今度は君ごと凍らせるよ。静かになるから」  ユリウスと僕は空いている席に座る。  そしてリリアンとロイもギルドにやって来ると、リリアンの笑い声がギルド内に響いた。 「見た? 私が盾で潰してやったゴブリン!」 「勿論見たよ! こんな感じだった」  ロイが舌をダラリと出して白目を向いてみせる。  良いなぁ、二人は。楽しそうで。馬車の中でも二人は盛り上がり、全然ユリウスの事はお構い無し。  頼むからこの面倒臭い友人を僕一人に押し付けないでくれ。 「そう! もう本当にスカッとしたわ! 誘ってくれてありがとう!」  そう言ってリリアン達も僕達のテーブルに座る。 「それなら良かった。……僕は依頼完了の報告をしてくるよ」  そう言って僕は努めて笑顔を見せると、カウンターに向かった。 「……何かあったの?」  そうリリアンの尋ねる声が聞こえる。 「ユリウスがロミオにモミアゲ燃やされたんだ。それもほんのチョ〜〜っッとだけね。フフッ」  ロイが笑って答える。僕の所まで聞こえてますよ? 「それに耳も火傷した! 見てよ!」  リリアンはユリウスが向け耳を見せているのが容易に想像出来る。。 「……少し赤いかしら?」 「やっぱり! これでママ自慢の可愛いお耳とはお別れだ!」  ユリウスは僕にも聞こえるように言う。  振り向くとリリアンは何と言って良いか迷ってる感じだった。  本当にこんなパーティで申し訳無い。  
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加