ドレス ―曄―

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「お前にとって悪い話じゃない。むしろ、これから本土に潜り込もうと考えているならラッキーなくらいだ」 「どういう…意味?」 「お前に特別な能力をやるって言ってるんだ。その代わり、お前はこれから別人に成りすまして生きていく必要がある」 威圧感のあるセイを目の前にして怯えているのに、急展開で頭がうまく働かないから更に私は動揺していた。 何を要求されているのか理解できないし、自分がこれから選択する答えが正しいという自信もない。 特別な能力をもらったところで使いこなせなければ意味が無いし、そもそも特別な能力って何なのだろう…そう考えて更に身構えてしまった。 「お前は何も考えなくていい。俺の問いかけにただ“分かりました”と言えば、お前だけじゃなく、仲間も無事に本土にもぐりこむことができる。全てお前の返答にかかってるんだ」 また…追い込まれた―――。 セイが何か言葉を発するたび、私は怯え、頭が真っ白になる。 「もっと…分かりやすく言ってもらえますか?パニックになるので……」 なんとか声を絞り出すと、セイは少しだけ身を乗り出し、口を開く。
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